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[2303.07147] Enhanced Vibrational Stability in Glass Droplets
ガラスの振動状態密度の低周波領域が示す非Debye的な冪則は近年,(無限次元の平均場レプリカ液体論等によって予言される)限界安定性の観点などから大きな注目を集めている(「振動」等のキーワードでブログ内検索してもらるとわかるがこのブログの中でも関連する記事が非常に多い).
2016年ころから始まって今にいたるまで様々な研究がなされ,様々なガラス系で普遍的に冪則を成していることは間違いなさそうと考えられているが,その具体的な指数の値については様々な観点で様々な論争が存在する.
今回そこに新たな一石が投じられる形となった.
この研究グループはこういう非Debye的冪則の話を議論する際にはガラスサンプルをどのように準備するかが非常に大事だという観点を提案している.
ガラスに限らず通常バルクを対象にしたMD数値計算を行う際には周期境界条件を設定する:これは熱力学極限では無視できるはずの表面の効果を殺してしまうことなどが主な目的である.
しかしこの研究グループはこの周期境界条件によってartifact的な残留応力が発生してしまい,得られたガラス配置は基本的にせん断ひずみに対して不安定な配置になっとるのよ,という考えている.
このグループが昨年発表したこの論文では実際にせん断に対して安定化させた配置とそういう操作をせずに作った(つまりそれまでの研究と同じようなプロトコル)配置とでは安定性が異なっており,それを反映して上記非Debye的な振る舞いが従う冪則の指数が変化することが示されている.
こういう論点から,今回の論文ではそもそも周期境界とかやめてopen boundaryで計算しようや,という考え方を提案している.
このopen boudnaryというのは色んな観点から確かに大事よね,という感じがする.
この論文ではopen boundaryでかつ『しっかりannealしながら配置を生成したら』冪指数の値が変化して,この論文でせん断に対し安定化させたときと整合的な結果になったよ,と報告している.
これまでの研究が測定していた指数は周期境界条件特有のartifactと言いたいのかもしれないが,周期境界でもしっかりannealしたらどうなるのかがすごく気になった(具に読んだら書いているかも?).
システムサイズ依存性も議論しており,このようなopen boundary特有の指数は大きいシステムで初めてしっかり見えてくるということも報告されている.
周期境界条件が表面の効果を無視できるように設定されていることを思うと,むしろ逆に大きい系で周期境界条件の状況に近づくんじゃないとおかしくない?と思うが,この論文の主張的には周期境界系のトーラス型のトポロジーが悪さしているという気持ちなのだろうか??
実際それがどっちなのかは非常に気になる.
もしトポロジーが悪さしているというならMD計算のあらゆる結果の再吟味が必要になったりするのかもしれない(MDで観測される拡散係数に計算領域の形状が影響してくるという話とも関係しているのかもしれない?)?
それはそれで面白いな.
Vertex modelの面白い性質をまた一つ見つけたという論文?
2つのcontextの話が前提になっている.
一つはCell Vertex modelでは各細胞が気持ち良いと感じる面積/周長比(二次元の話:三次元でも似たような話がありそうだが知らないです)の値に応じて固体/流体転移が起こるという話.
もう一つはその固体/流体転移点付近でcompression/dilationに対する線形弾性応答が非対称であるという話(これは知らなかった:論文はたぶんこれ?).
この論文ではまずこのcompression/dilationに対する非対称性が転移点から離れていても存在することを示しているっぽい.
具体的にはcompressionの下では固体的状態からの流動化が観察され,dilation下では逆に流動相が固化するらしい(直感的には逆な気がするな?).
ここから色々あって,細胞膜の自発曲率の効果を陽に考えると,それによって固体/流体転移点が変わるということを示したらしい.
現実系との対応を考える上では重要になりそうな知見.
[2303.07234] Multi-objective analysis of the Sand Hypoplasticity model calibration
Hypoplasticという概念があるらしい.
粘度の構成則に使われたりするらしい.
面白そう.
このレビュー?論文にざっくりしたモデル概要が載っていそう.
今回の論文ではこのモデルの適用可能性を徹底的に調査したっぽい?
特に遺伝的アルゴリズムを使ってパラメータ空間を広範囲に探索しているらしい.
[2303.06375] About the de Almeida-Thouless line in neural networks
相図上でレプリカ対称解が不安定になる線をAT線というが,レプリカ法を用いた徹底的な解析なしにAT線を引く手法を提案しているらしい?
しかも厳密らしい...?
Abstractを読むとレプリカ対称解周りで1-RSB的なschemeで自由エネルギーを展開すれば良いということだがこれでは何もわからんな...
Hopfield模型とHebbian相互作用するmulti-node系に適用した結果が報告されている.
後者に対してAT線を書いたのは初めてという理解で良いのだと思う.
これはニューラルネットワークの損失関数地形がRSB的な厄介な性質を持ち始める限界を見積もるための第一歩を与えたという理解で良いのか...?
このほかSK模型なやp-spin系などAT線がすでにわかっている系にも適用してconsistencyも確認しているらしい.
de AlmeidaとThoulessらのアプローチの一般化になっているらしい.
[2303.07010] Hydrodynamic finite-size scaling of the thermal conductivity in glasses
ガラスの熱伝導率を賢く計算するための手法を提案する論文か?
熱伝導率を計算したことがないので全然知らなかったが,熱伝導率の計算に必要な計算量は粒子数の3乗にスケールするから大変だったらしい.
流体力学的な議論の結果いい感じに計算負荷を軽減したということらしい.
所属の最後がItalyの後 European Unionまで書かれていて一体感を感じた.