【A】9/26登場分(3+1報)

[2209.11499] The cavity method: from exact solutions to algorithms

例の本"Spin Glass Theory & Far Beyond - Replica Symmetry Breaking after 40 Years"の18章.

Replica云々いうタイトルやけどライバル(?)のcavity法の章もちゃんと存在するらしい.

 

[2209.11569] Asymmetric Roughness of Elastic Interfaces at the Depinning Threshold

Depinning転移点直上での界面のroughness parameterは一つじゃ不十分じゃないでしょうか?という論文.

界面に働くdriving forceが対称性を破るからということらしい.

界面がザクザクしているけど,その平均値\langle h\rangleの周りでプラス側とマイナス側の分布を見ると分布がskewnessを持つとのこと.

 

roughnes parameterはamorphous固体の塑性変形(つまりYieding criticality)ではavalanche eventが持つfractal次元に対応するわけだが,これも似たような対称性の破れを示すのだろうか?

Linの論文ポンチ絵みたいにlocalなplastic strainの蓄積を見たらいいのだろうか.

興味深いけどここから何をどう捉えたらいいか難しいな.

 

 

[2209.11538] Nonequilibrium design strategies for functional colloidal assemblies

せん断をかけた系で非平衡変分原理に則って確率的アルゴリズムで最適化を試みたらいい感じに高効率化でき,機能性コロイドアセンブリが設計できたという話.

非常に示唆に富む内容だと思う.

 

[2209.11749] A Knowledge-driven Physics-Informed Neural Network model; Pyrolysis and Ablation of Polymers

【A】9/23登場分(5報)

[2209.10917] Dynamic Gardner crossover in a simple structural glass

Gardner転移ならぬGardnerクロスオーバー(長いので以下GCOと呼ぶ)についての論文.

statementは強烈で,①二次元であっても②どんなanneal度合いであってもGardner的な物理は実は顔を出しているんだよ😉という話だった.

いずれもこれまでの知見と反しているものでなかなかの結果である.

 

対象は二次元hard sphere系で,数値計算によってGCOについて調べている.

特に,いわゆるOrdinary glass相でもGardner的な性質が出ていることを示すために,従来のState-followng analysisをinter-metabasin jumpが存在するような系にも拡張したような数値的プロトコルを提案している点がテクニカルなハイライト部分といえると思う.

ちなみに,転移ではなくクロスオーバーという言葉をわざわざ使用しているのは二次元系ではGardner転移は存在し得ないことが信じられているからだと思う(このレビューのVII-Bの最後のあたりの議論).

それでもわざわざ二次元系で数値計算をしたということは,今回のプロトコルを用いたら二次元でもGCOが観察されることを確信していたからだろうか(確信さえあれば二次元の方が数値計算は楽やし)??

 

Hard sphere系なので圧力無限大の点としてJamming転移点(実際はJammingする際の密度がどのように圧力を無限大に持っていくかのプロトコルに依存するので相図上ではJamming転移線をなす)が定義できる.

このJamming転移線にどのように近づいてもJamming前にGardner的な振る舞いにぶち当たってしまうらしい.

いわゆるOrdinary glassではGardner的な性質の発現による"緩和"の他に,シンプルにbasin間を移動するエイジングも存在するからGardner的な性質が見えにくくなっているんだよ,という話らしい.

 

全体的にすごくきれいにまとまっていたが,個人的にちょっと残念だったのはmarginal相がしっかり定義されていなかった点.

図1aとかを見るとordinary相からの圧縮によって到達できる限界点みたいなことになっていそうな感じがするけど,数値的な結果だけからそう言い切ることもできないしクリアに定義できなかったのだろうなとは思うがちょっと寂しかった.

でも図1cのようなUltrastable相とMarginal相の概念的な関係をexplicitにpresentした論文は初めてではないかと思う.

これは「そういう理解で良かったのね」と思えてよかった.

 

 

[2209.11098] Active Glassy Dynamics is Unaffected by the Microscopic Details of Self-Propulsion

2013年くらいからActive Glassが流行っている.

たとえば論文1論文2論文3論文4論文5あたりを読むと色々重要なところはつまみ食いできるかもしれない.

(論文1はactive系と外力駆動系が本質的に違い得ることを示した論文で,論文5はレビュー.論文2,3は初めて論文1の予言を数値的に示したもので論文4はActivenessの強さに対するガラス的動力学の不思議な非一様依存性について調べた論文).

 

これまであまりActive matterとしてのモデリングの詳細の影響を比較した論文はないと思うが,この論文ではモード結合理論と数値計算により代表的な自走粒子模型(Active Brownian ParticlesとActive Ornstein-Uhlenbeck Particles)で観察されるガラス的動力学の発展のようすを比較している.

少なくともこの2つのモデルに関してはモデル詳細依存性は観察されなかったという結論になっている.

実際,結果は定量的にめちゃくちゃ一致している.

短時間でもめっちゃ一致しているのが興味深い.マクロな密度場を見ているからということか?

 

[2209.11049] The Kauzmann Transition to an Ideal Glass Phase

例の本"Spin Glass Theory and Far Beyond - Replica Symmetry Breaking after 40 years"の11章?

理想ガラス転移の話.

 

[2209.10869] Enskog kinetic theory of binary granular suspensions: heat flux and stability analysis of the homogeneous steady state

Abstractによると,Enskog理論を多成分系に拡張する,という話は2020年頃に始まったということだろうか?

この論文では2020年の論文で提案された手法を用いて熱に関連した4つの輸送係数を新たに解析的に計算したということらしい.

そして線形安定性解析をすると均一な定常状態はstableということらしい(longitudinal,transverse両方).

Free-cooling gasでは一旦unstableになってclusteringするイメージだったが,定常状態だとstableという理解になるのか?

微妙にsetupが違う(background gasみたいなものの有無)先行研究ではunstableになるらしいので結構ややこしい話なのかもしれない.

 

[2209.11021] Generalized Langevin dynamics simulation with non-stationary memory kernels: How to make noise

メモリカーネルがnon-stationaryなときのLangevin方程式のノイスを真面目に数値計算するための方法についての論文.

ミクロなLiouvillianが陽に時間依存性を持つ系を対象に射影演算子法で粗視化してLangevin方程式を導出した場合を想定しているらしい.

【A】9/22登場分(1報)

[2209.10473] Equivalence of fluctuation-dissipation and Edwards' temperature in cyclically sheared granular systems

 

タイトルを見て「数値計算やろなぁ」と思ってたけど実験やった.sugoi.

粉体系に周期せん断を印加した際に観察される有効温度を測定してみたでという話.

 

非平衡やけど揺動散逸定理が成立すると思ってその係数を有効温度にしたろ!という定義とEdwardsアンサンブルでの温度的量,compactivityがいい感じに整合的やったという話.

 

有効温度は色々定義できるけど全部整合的やで!という話としてはこの論文では5種類くらいの定義を比較して整合的と言っている.

一方,測定の仕方に依存するよね,という話としては質量=時間スケール依存性を議論したこの論文とか,テンソル成分依存性を議論したこの論文などもある.

前者は揺動散逸定理は低周波で破れますね,という話に関連していると考えると理解しやすいのかなと思っている.

ちょっと違うけど,有効温度を温度やと信じたら非平衡系を平衡系にマップできるか?にtryしたらあかんかった話としてこの論文などもある.

【A】9/21登場分(3報)

[2209.09579] Microscopic observation of two-level systems in a metallic glass model

超低温までしっかり"平衡化"しながらannealしたガラスの性質が,主にフランスの研究グループによってここ5年ほど精力的に調べられてきた.

特に以下で述べる特殊な数値計算手法を用いて従来の分子動力学計算やMonte Carlo法では実現不可能だった超低温(モード結合理論が予言する転移点より下)でのガラス物性が色々調べられるようになって,無限次元で構成された平均場レプリカ理論のどういう部分が有限次元でも生き残ってどういう部分が破綻するかといった観点での研究が白熱していた.

 

これらの研究を遂行するための主たる道具立てはSwap Monte Carlo法と呼ばれる特殊な数値計算法だったが,これがうまくworkする系を考案するのも難しく,これまでは緻密に作り込まれた特殊な多分散系(以下では『従来の模型』と呼ぶ)での計算例しか報告されていなかった.たぶん.

しかも引力のない相互作用(WCAとかsoft potentialとか)のみが対象だった.はず.

 

最近新たに引力部分も持つstandardなLennard-Jones potentialで相互作用する三成分混合系で上手くSwap Monte Carlo法が使えるものが見つかったらしい.

本論文では,従来の模型で獲得されてきた超低温状態についての知見が新たに見つかった三成分系でも成り立つことを示したというものかなと思う.多分.

もしかしたらちゃんと読んだら多少の差分はあるのかもしれないが,以下に述べる理由でそんなものはなくても良いと思う.

ちなみに例えば論文1論文2論文3の内容などがtraceされているように思う.

 

個人的にはこの研究の価値はただpotentialを変えても上手くいったよ,ということを示しただけにはとどまらないと感じた.少し長くなるが理由を以下に述べる.

上でリンクづけした論文など,超低温状態のガラスについて近年獲得されてきた知見はいずれも『従来の模型』についてのみ観察されてきたものなので,それらをどの程度一般論として受け入れていいかは厳密にはなんともいえない状況が続いていた.

例えば「従来の模型が複雑すぎるからわかりにくいけど実はごく低温ではある種の結晶化が起きていて,それに伴う異常な振る舞いを見ているだけじゃないのか?」という指摘も存在したりしたようだ(Swap Monte Carloを適用可能な系が見つけにくい理由はここにあるらしい:適当に用意した系では簡単に結晶化してしまう).

(ちなみにこの点については著者らは頑張ってそんなことないという状況証拠を提示していたはず.)

今回の論文で質的に大きく異る系でも同じ性質が現れていることが示されたことで,ここ数年の進展をしっかり受け入れて良さそうな雰囲気がグッと強まったと思う.

そういう意味でこの論文の価値は非常に大きいと個人的に感じた.

(たぶんこういう認識で良いのだと思う.)

 

 

[2209.09569] Disentangling structural and kinetic components of the α-relaxation in supercooled metallic liquids

過冷却液体のα緩和についての実験論文.

よくある緩和時間によって定義されるkinetic fragilityの他に,g(r)の第3第4ピークの情報から構成されるstructural fragilityというものも測定されている.

kinetic fragilityは同じだがstretched exponent \betaの値が異なる二種類の合金系を用意してきて,\betaとstructural fragilityがよく相関しているということを示したのだと思う.

つまり,dynamic heterogeneityが構造によって決まるという主張になるのだと思う.

これは最近の数値計算系や機械学習系の論文と定性的には整合する結果だと思うし,非常に興味深い.

長さスケール依存のダイナミクスの解析も行っていて中距離秩序構造との関係についても議論しているようだ.

 

仕方ないのだが一部の線形フィッティングは思い切った感がある.

傾きが0という主張だからまぁいいのか.

 

[2209.09689] Stochastic equations and dynamics beyond mean-field theory

おなじみの本"Spin Glass Theory and Far Beyond - Replica Symmetry Breaking after 40 years"のchapterの一つ.

7ページしかなくて一番短いかもしれない.

 

 

【A】9/20登場分(3報)

[2209.08861] Elasticity, Facilitation and Dynamic Heterogeneity in Glass-Forming liquids

せん断下のガラスの塑性変形・Avalancheの解析に主に用いられてきたElastoplastic modelを熱ゆらぎの下で緩和する過冷却液体系に拡張した論文.

Monte Carloっぽい形で温度の効果を上手く導入している.

一方,Elastoplasitc模型としては原始的な部類のモデルになっていて,各サイトのparameterが一緒になっている.

その辺りは今後の課題ということになっているが,そのくらい原始的なモデルでも動的不均一性の振る舞いが説明できるというのがメインの主張のよう(原始的だからこそ上手くいったというようなことにはならないのかが少し気になった).

また,特にlocalな塑性変形の間の弾性的な相互作用が動的不均一性の再現に重要という結果も掲載されている.

弾性場が存在すると不均一性は増すが緩和時間は小さくなるらしい.

緩和時間が長くなるほど動的不均一性も大きくなるグラフを見慣れていると一瞬不思議な気がするが,そういう性質が創発的に生じた弾性的相互作用の効果であることがわかったということか.

 

動的拘束模型との関係もちゃんと議論されている.

 

[2209.09055] Plastic ridge formation in a compressed thin amorphous film

ガラス薄膜を圧縮すると表面にシワができるらしい.

こういう話を聞くと『はいはい,連続体記述したときに出てくる弾性不安定性の話で記述できるんでしょうね』という気がしてくるのは人の性のようで,過去の研究はそういうものがばかりだったらしい.

 

一方,そうしたシワの形成に伴いガラス内部に塑性変形が発生している事自体は知られていたが,それらはシワが発生したことで生じたものと解釈されていたらしい.

 

この論文ではむしろ塑性変形(特に塑性変形イベント間の相互作用も重要:この点一個上の論文と似た話)こそがこのシワを生み出しているのだ!という主張を提案している.

面白いですね.よく考えますね.

ALさんといえば塑性変形みたいなところもあるもんなぁ.

 

 

Relaxation dynamics transition near the dry-wet transition in foams | Research Square

ユニークなセットアップで泡の外場に対する緩和応答を詳細に調べた論文.

泡の場合はjamming転移点より上でもwet-dry転移というのがもう一つあって,wet状態になると割とmobilityを獲得するらしい.

 

この論文では安定した状態(静止しているということ)の泡のjammed packingの中央付近にそっと水を添加し局所的に希薄化させた際の系の緩和応答を調べている.

メインの結果は緩和応答のcollectivityがdry-wet転移点をさかいに切り替わるというものだと思う:dryのときには間欠的に発生するT1イベントで階段状に緩和が進行するが,wetのときには連続的にだらだらと緩和が進行するようになるらしい.

この転移付近での緩和イベント発生時のミクロな泡の形状などを詳細に観察し,この転移が動的転移であると結論づけられている.

Avalancheっぽさについてもサイズ分布の観点で検証がなされていて,avalancheとはちょっと違いそうねということも議論されている.

 

一連の話がすべてabove jammingで起こったものだということを考えると,転移点直上を意識してはいても『harmonic potentialは泡の模型だ』みたいなことは言いにくいなぁという気がする.

また,このVertex model論文で観察された転移とdry-wet転移の関係が気になった.

 

 

【A】9/19登場分(2報)

[2209.07975] The high-d landscapes paradigm: spin-glasses, and beyond

おなじみの本"Spin Glass Theory and Far Beyond: Replica Symmetry Breaking after 40 Years"の第6章と思しき原稿.

 

 

[2209.07743] Introduction to topological defects: from liquid crystals to particle physics

トポロジカル欠陥についてのレビュー論文.

図1は指紋を例に+1/2と-1/2の説明をしている.

特にuniversalかもしれない側面を強調して,液晶はもちろんのことBiology,Cosmology,Geology,さらにはParticle physicsでの例を取り上げているようだ.

 

 

 

9/12~の週登場分(15報)

学会の週に出ていた気になった論文たち.

厳し目に選定したがやはりこの位の数は気になるものがあった.

学会中はどうしても論文チェックできない問題があるなと感じた.

特に久しぶりの対面学会でめちゃくちゃ疲れて帰宅後も呆けてしまっていた.

 

いずれも非常に気になる論文たちばかりだが,一回溜め込むとなかなかすべてチェックするのは難しくなってしまう.

小まめに毎日チェックする大切さを教わった週だった.

そしてActive matter系はおしゃれなタイトルが多いな?

 

[2209.05311] Anomalous Elasticity and Emergent Dipole Screening in Three-Dimensional Amorphous Solids

 

[2209.04237] Anomalous elasticity of disordered networks

 

[2209.04882] Statistical mechanics of deep learning beyond the infinite-width limit

 

[2209.04168] Playing with Active Matter

 

[2209.04709] Mechanical and geometrical properties of jammed wet granular materials

 

[2209.07227] Active Refrigerators Powered by Inertia

 

[2209.06876] Kinetic theory and memory effects of homogeneous inelastic granular gases under nonlinear drag

 

[2209.03966] Ergodicity breaking provably robust to arbitrary perturbations

 

[2209.05454] Active particles with chirality: Application to pedestrian flows

 

[2209.05388] An Ising model for the thermal and dynamic properties of supercooled liquids and the glass transition

 

[2209.04824] Hard Optimization Problems have Soft Edges

 

[2209.05835] Geometric criteria for the absence of effective many-body interactions in nonadditive hard particle mixtures

 

[2209.05544] The Mori-Zwanzig formulation of deep learning

 

[2209.06884] Connections between efficient control and spontaneous transitions in an Ising model

 

[2209.06876] Kinetic theory and memory effects of homogeneous inelastic granular gases under nonlinear drag