【A】4/6&7登場分(3報)

[2304.02411] Quantum Mpemba effect in a quantum dot with reservoirs

熱い水の方が冷たい水よりも短時間で凍ることがあるというムペンバ効果を量子系で調べたという論文.

2つの論点を挙げて面白い進展を与えているらしい.

量子ムペンバ効果の研究自体はこれまでもなかったわかではないらしいが,これまでは密度行列から構成した平衡状態からの"ズレ"のようなエントロピー的な観点での研究が多く温度に注目したもの(熱的な量子ムペンバ効果と表現されている)がなかったという点が著者らの問題意識の1点目.確かにムペンバ効果といえば熱いのが冷たいのより速く凍るという話がオリジナルなので温度で議論するのが自然かもしれない.この論文ではこうした熱的な量子ムペンバ効果が観察され得ることが示されている.

2点目の論点が特に面白くて,量子にせよ古典にせよマルコフ系でムペンバ効果を議論する際はマスター方程式の遷移行列が持つ最も遅い緩和モードのみに注目した議論がなされていた点に問題式を持っている.これは長時間極限に注目すると最もらしい議論のような気もするが今回の論文のセットアップではむしろこのモードがムペンバ効果とは無関係になるらしい.不思議だ.

 

ちなみに日本語ではなぜかムペンバという読みで定着してしまっているが,英語でははじめのmは発音せずペンバとなるそうなので注意が必要かもしれない.

 

[2304.02215] Early-Stage Bifurcation of Crystallization in a Sphere

物質の結晶状態はいくつかのパターンがありえるが,そのうちのどれが実現するかが実は熱力学的安定性だけでは決まりませんね,という話.

熱力学と動力学(と訳すのか?kinetics)の競合などもあり単純に熱力学的再安定状態にはならないという話.このあたりは少しガラスにも似た話だなという感じ.

実際金属ガラスの局所的秩序構造として知られる正二十面体云々という話も出てくる.

 

粒子数が少ない場合は表面の寄与も大きくなるのでバルクと異なることもあるという話もあるが,この論文では小さいdroplet中でのコロイド粒子の結晶構造を観察している.

 

 

[2304.01393] Every Author as First Author

著者順に起因した争いを消し去るための方法(超力技)の提案.

これによってEqually-contributedとか書く必要がなくなる...か...