【A】2/28登場分(5報)

[2302.13666] Out-of-equilibrium spherical model with correlated noise: critical phenomena, long-range correlation, and hyperuniformity

Model Bのハミルトニアンのバルク項的な部分がspherical constraintになっているspherical modelというものを扱い,ノイズ項として時空間相関を持ったゆらぎを導入することで臨界現象に対する相関付きノイズの影響を考察しようという論文(最後の方にModel Aも存在).

ノイズの時空間相関はフーリエ空間において波数および周波数の冪乗で与えられているが,それぞれの指数の値の組み合わせによって上部・下部臨界次元を含む系のいろんな挙動が決定されることが示されている.

『系の挙動』の中にはhyperuniformityや,下部臨界次元が2未満になりうることなども含まれている.

先週出た『二次元でMarmin-Wagner定理が破れる論文』の一部がいきなり理論的に説明されたかもしれない?

 

 

[2302.13569] The yielding of granular matter is marginally stable and critical

二次元2成分粉体系の実験でpure shearを印加して降伏転移を調べた論文.

限界安定性の観点で調べてみたら降伏転移点で限界安定性が発現して見えたという話.

ガラス系を対象に似た話を調べているマンとして結構驚きの結果ではあった:接線方向の粒子間摩擦の影響で色々話が変わってくると思っていた.

そもそもshear印加してない話として最近こういう論文があったらしい.

知らなかった...

 

接線摩擦がないガラス系において低周波域でQuasilocalized modeが冪則に従うという意味での限界安定性があるというのはestablishされた話だと思うが摩擦があると粒子間の相対運動が安定化されるので低周波域でQuasilocalized modeがなす振動状態密度はgappedになると思っていた.

限界安定性にも複数の側面が存在し,有限次元ではそれらが同時に発現するわけではなさそうな雰囲は存在するが,今回観察の対象にしている\theta\gammaといった指数は振動状態密度と本質的に同じ側面を見ていると期待されるのでかなり不思議な感じがする.

 

 

[2302.13417] Training neural networks with structured noise improves classification and generalization

ニューラルネットの学習過程におけるノイズの役割の話.

ここでもGardnerさんの仕事がかなり重要な位置づけとして引用されている.

あれだけの若さで他界されたのにこんなに色々重要な礎を築いているというのは本当にすごいなぁと思うし歴史にifがあったらどうなっていたのかと考えてしまう.

 

[2302.13131] Long-range Velocity Correlations from Active Dopants

Active matter系ではexplicitなalignment mechanismがなくても長距離の速度相関が観察されることがあるが,passiveなathermal系にちょこっとActive Brownian粒子を足すだけでも同様の現象が観察されるという話らしい.

 

この論文がどういう気持で長距離相関と言っているかは(ちゃんと読んでないので)わからないが,"the orientational order emerging from self-propelled polar particles aligning nematically" がある長さスケール以上では "quasi-long-ranged"になるという話を教えてもらった(この論文).

粒子がクルンと向きを変えるくらいのタイムスケールに相当する長さでめっちゃ長いから実測は困難らしい.

 

[2302.13973] Corrections to Maxwell-Boltzmann ideal gas model from a quantum phase space approach

古典系理想気体の速度分布を表すMaxwell-Boltzmann分布は量子系ではそのままではだめらしく,何がどのようにだめになるかを明らかにした論文らしい.

高温極限や大きなシステムサイズの漸近極限として古典近似解が得られるらしい.