【A】3/1登場分(3報)

[2302.13618] Constraints on fundamental physical constants from bio-friendly viscosity and diffusion

微細構造定数や陽子電子質量比のような基礎的な量が狭い"habitable zone"にあるおかげでこの世界に生命が誕生したのだというような話が存在するが,拡散係数や粘性の適切なboundを考えてあげるとこれらの定数の"奇跡的なバランス"がよく理解できるという論文.

流体の粘性が温度の関数として原子種に依らず極小値を持つという性質が重要な役割を担っていい感じのboundを与えてくれる.

その制約の下で「例えばプランク定数が今より小さいとすると...」と順番に考えていくと上記boundのせいで生物にとっていい感じの環境が存在しないことがわかるという論理展開.

めっちゃ面白い.

 

 

[2302.14818] Symbiotic Dynamics in Living Liquid Crystals

液晶とアクティブマターを混ぜた系の振る舞いを数理模型で調べた論文.出てくる単語がやたら難しい.

Active matterはToner-Tu model,液晶はLandau-de Gennes自由エネルギーで扱い,両者の相互作用はめちゃくちゃ単純に液晶のnematic order tensorとActive matterのpolarization vectorのダイアド積にしている.

これは実験を根拠にしているらしいが,どういう実験事実のことかは明記されていなかった.(たぶん液晶分子とActive matterがalignするというようなことだと思う)

数理的には液晶分子の持つdirector vectorとActive matterのpolarization vectorが平行になろうとする寄与の最低次数の項に対応する(係数c_0が正じゃないとだめだと思うが).

すでに調べられていそうな数理模型だが,意外とやられていなかったのか?

 

数値計算で相図を調べると,disorder相とorder相の間に非自明な相が2つ存在することがわかったと報告されている.

1つ目の相はdisorderなbackgroundの中にlocalizeしたordered bandみたいなものが生成するキメラ相,

2つ目の相はキメラ相のordered bandが複数生成してソリトン的に振る舞う相?

 

 

 

[2302.14328] Emergent glassiness in disorder-free Kitaev model

キタエフモデルは名前くらいしか知らないが,disorder-freeなのにガラスらしさが出たらしい.

キタエフスピン液体の候補と考えられている実験にinspireされて密度行列繰り込み群を使って調べたというのが粋.