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[2302.11872] Measuring Restraint in Amorphous Materials from Static Speckle Scattering

ガラスの物理の大きな不思議さの一つに,『温度をちょこっと変えただけで粘度が15桁くらい変わるが,その際(2体相関のレベルでは)構造がほとんど変わらない』という事実が存在した.

その後,『構造はほとんど変わらないが,ダイナミクスの空間分布をしっかり観察するとよく動くところとあまり動かないところが空間的なドメインを形成している』ことがわかり,こうしたいわゆる動的不均一性がガラスの本質的な性質か?ということで広く研究者達の興味を惹いてきた.

 

この論文ではそもそもの前提となっていた『構造がほとんど変わらない』という認識が測定結果の処理の仕方(波数ベクトルの方向についてのspherical average:構造の等方性から正当化される操作だと信じられてきた)に起因したartifactであって実際はめっちゃ変わってるで,ということを数値計算で示したとしている.

数値計算に用いた模型はおなじみの三次元Kob-Andersenで,粒子数は気持ち大きめのN=5000(空間次元についてはexplicitな記述なし).

温度はT=0.05までSwapでしっかり冷やしたと書いているが,結晶化を避けてそんなに下げられるのか?と感じた(ちなみに三次元Kob-Andersen模型のMCT転移点は0.435くらい).

低温のS(q)を見ても結晶化の傾向がないので避けられたということか...

 

mとMという2つの構造指標(それぞれゼロ温度での静的構造因子と有限温度の静的構造因子の比のようなものだが,静的構造因子の計算にあたりspherical averageをとっているかが異なる)を導入しているが,Mをspherical averageとったものとmが大きく異る温度依存性を示すことが示されている.

Mの方はかなり強い温度依存性を示しており,確かに単一の波数ベクトルで観察すると構造の温度依存性はかなり強いということがわかる.

温度ゼロの構造がまず大事なものとして存在して,そこからのズレとして構造を見るという考え方や,温度ゼロの配置の選定の仕方などがどこから来たのかちょっとついていけなかったが色々あって温度ゼロで1になり液相で0になるアモルファス構造秩序変数の提案にも成功している.

この秩序変数はDebye-Waller因子に対応しているが,完全に静的な測定から求まる!!

 

多体の構造は発達していくことが最近わかってきていたのでなるほどそうかという感じだった.

『ガラス転移は構造の変化を伴わない』とはもう言わせない,ということらしい.

 

ちなみにこの論文のmain player的測定量であるMのspherical average前の値がFigure S1に掲載されているが,その見た目が衝撃的でびっくりした.

 

 

[2302.11968] Buckling Metamaterials for Extreme Vibration Damping

メタマテリアル論文.

 

 

[2302.12250] Phase diagram of training dynamics in deep neural networks: effect of learning rate, depth, and width

確率的勾配降下法の学習過程の相図?