【A】9/8登場分(3+5報)
[2209.02937] Topology of vibrational modes predict plastic events in glasses
ガラスに外場を与えた際に観察される塑性変形を外場印加前の構造から予測したい人間は結構多いハズだ.
塑性変形はShear transformation (ST)というlocalな配置換えで起こると考えられているが(もっと言うと基本的にはとことんlocalなT1 event的なneighborの組み換えが素過程と思って良いと思う),さらにこのSTが近年話題の局在振動モードに対応していることがわかってきている.
そのため局在振動モードやそこに少し非線形性の効果まで加味してみたものなど様々な指標が提案され,それらと塑性変形との関係が調べられてきたが,なんかイマイチ『これやで!!』という対応関係が見えてこなかった.
この論文では二次元系を対象にして,局在振動モードだけではなくて高めの値も含む様々な周波数のモードを拾ってきて,それらのモードの固有ベクトル場が持つトポロジカル欠陥に注目しようねという新しい観点を提案している.
-1の欠陥の場所と塑性変形が発生する場所に強めの相関があるという話.
もちろん周波数依存性についても議論していて,低周波ほど寄与率が高そうなことなどが示されている.
相関がめっちゃくちゃ高いというわけではなさそうだが非常に面白い観点の解析だし,定性的な解釈も納得感があるものだった.
他の色んな指標と関連付けて議論したりシステムサイズ依存性を見たりすると有意義そう.
[2209.02922] How Surface Roughness Affects the Interparticle Interactions at a Liquid Interface
著者的にも『表面roughnessの効果かぁ...摩擦とshear thickeningの関係とかそのあたりの話かなぁ?』と思って中を見てみたら結構違う話だった.
気液界面に異方性粒子を置くと表面のひずみの効果(と信じられている)で引力が働くらしい.
表面がroughになっているコロイドでも同様の引力が観察されるらしい.
そうなのか.
この論文ではコロイド表面のroughnessをcontrolしながら密度も変化させ,気液界面でのコロイド集団の相状態を実験的に調べている.
対応する数値計算も行っている.
コロイド表面をどのように処理したらroughnessがcontrolできるのかは想像もつかないが,SEM像を見るとたしかにしっかり変化している.
(どうでもいいがroughになるにつれてより美味しそうに見える.)
かなり高密度でも引力が作用しているらしく,Jamming転移前にpercolation転移のようなものが観察されるというのが主結果だと思う.
特にコロイドゲルに似ているらしい.
さらにroughnessの導入によって転移点が小さくなり,結晶秩序も小さくなることが報告されている.
[2209.02802] A general theory of two-dimensional melting: the Gaussian-core model explained
二次元の相転移理論としてはKTHNY理論が有名だが,この理論には『一次転移が記述できない』,『転移点の具体的な値の予言能力がない』などの欠点があった.
この論文では自己無撞着変分近似という手法とくりこみ群の方法を組み合わせることで定量的に転移点を予測することを可能にしたらしい(図2でガウスコア模型の数値計算結果と相図を比較している:普通の平均場と比較すると桁違いの精度になっている).
さらに一次転移の予言能力もあるらしい(この点はどこに対応するのかわからなかった).
めちゃくちゃすごい手法だと思うが,二次元特有の性質をどこかで使っているっぽい(詳細は一切追っていないが結言パラグラフでの今後の展望の言い回し的にそんな感じがする)?
手法のお気持ちだけでも要チェックや.
####以下はReview論文
[2209.03173] Machine Learning for High-entropy Alloys: Progress, Challenges and Opportunities
######以下2報は例の本"Spin Glass Theory and Far Beyond - Replica Symmetry Breaking after 40 years"のいずれかの章.
[2209.02825] Dynamical Heterogeneity in Glass-Forming Liquids
[2209.02829] The Jamming Transition and the Marginally Stable Solid
第何章かのネタバレを防ぐ目的か,いずれも第一章ということになっている.
『お!動的不均一性が記念すべき1章か.挨拶的な章は第0章扱いか』とか思っていたら『こっちも第一章やないかい!!www』となった.
ちなみに先週列挙だけしてた論文のうちの一つである,ecology系におけるglassinessについての章が第27章らしい.
何章構成の予定なのだろう?
######以下2報はそれぞれPhs. Rev. Fluids,Nat. Commun.で出版が決まった論文らしい.
粉体層が水面に崩れ落ちた際に発生するimpulse waveについての予測モデルを提案しているらしい.
水層が浅いというのも重要そうだが,特定条件下での津波の予測モデルとして捉えることもできるらしい.
[2209.03206] Surface melting of a colloidal glass
図がめっちゃキレイやからsimulationかと思ったら実験らしい.
二次元ガラス薄膜の表面を観察している.
ガラス転移点よりごく低温でも表面には液相ができていて,その下にはバルクと同じ密度やのにダイナミクスが速い領域が存在するらしい.