【A】9/20登場分(3報)

[2209.08861] Elasticity, Facilitation and Dynamic Heterogeneity in Glass-Forming liquids

せん断下のガラスの塑性変形・Avalancheの解析に主に用いられてきたElastoplastic modelを熱ゆらぎの下で緩和する過冷却液体系に拡張した論文.

Monte Carloっぽい形で温度の効果を上手く導入している.

一方,Elastoplasitc模型としては原始的な部類のモデルになっていて,各サイトのparameterが一緒になっている.

その辺りは今後の課題ということになっているが,そのくらい原始的なモデルでも動的不均一性の振る舞いが説明できるというのがメインの主張のよう(原始的だからこそ上手くいったというようなことにはならないのかが少し気になった).

また,特にlocalな塑性変形の間の弾性的な相互作用が動的不均一性の再現に重要という結果も掲載されている.

弾性場が存在すると不均一性は増すが緩和時間は小さくなるらしい.

緩和時間が長くなるほど動的不均一性も大きくなるグラフを見慣れていると一瞬不思議な気がするが,そういう性質が創発的に生じた弾性的相互作用の効果であることがわかったということか.

 

動的拘束模型との関係もちゃんと議論されている.

 

[2209.09055] Plastic ridge formation in a compressed thin amorphous film

ガラス薄膜を圧縮すると表面にシワができるらしい.

こういう話を聞くと『はいはい,連続体記述したときに出てくる弾性不安定性の話で記述できるんでしょうね』という気がしてくるのは人の性のようで,過去の研究はそういうものがばかりだったらしい.

 

一方,そうしたシワの形成に伴いガラス内部に塑性変形が発生している事自体は知られていたが,それらはシワが発生したことで生じたものと解釈されていたらしい.

 

この論文ではむしろ塑性変形(特に塑性変形イベント間の相互作用も重要:この点一個上の論文と似た話)こそがこのシワを生み出しているのだ!という主張を提案している.

面白いですね.よく考えますね.

ALさんといえば塑性変形みたいなところもあるもんなぁ.

 

 

Relaxation dynamics transition near the dry-wet transition in foams | Research Square

ユニークなセットアップで泡の外場に対する緩和応答を詳細に調べた論文.

泡の場合はjamming転移点より上でもwet-dry転移というのがもう一つあって,wet状態になると割とmobilityを獲得するらしい.

 

この論文では安定した状態(静止しているということ)の泡のjammed packingの中央付近にそっと水を添加し局所的に希薄化させた際の系の緩和応答を調べている.

メインの結果は緩和応答のcollectivityがdry-wet転移点をさかいに切り替わるというものだと思う:dryのときには間欠的に発生するT1イベントで階段状に緩和が進行するが,wetのときには連続的にだらだらと緩和が進行するようになるらしい.

この転移付近での緩和イベント発生時のミクロな泡の形状などを詳細に観察し,この転移が動的転移であると結論づけられている.

Avalancheっぽさについてもサイズ分布の観点で検証がなされていて,avalancheとはちょっと違いそうねということも議論されている.

 

一連の話がすべてabove jammingで起こったものだということを考えると,転移点直上を意識してはいても『harmonic potentialは泡の模型だ』みたいなことは言いにくいなぁという気がする.

また,このVertex model論文で観察された転移とdry-wet転移の関係が気になった.