【A】9/23登場分(5報)

[2209.10917] Dynamic Gardner crossover in a simple structural glass

Gardner転移ならぬGardnerクロスオーバー(長いので以下GCOと呼ぶ)についての論文.

statementは強烈で,①二次元であっても②どんなanneal度合いであってもGardner的な物理は実は顔を出しているんだよ😉という話だった.

いずれもこれまでの知見と反しているものでなかなかの結果である.

 

対象は二次元hard sphere系で,数値計算によってGCOについて調べている.

特に,いわゆるOrdinary glass相でもGardner的な性質が出ていることを示すために,従来のState-followng analysisをinter-metabasin jumpが存在するような系にも拡張したような数値的プロトコルを提案している点がテクニカルなハイライト部分といえると思う.

ちなみに,転移ではなくクロスオーバーという言葉をわざわざ使用しているのは二次元系ではGardner転移は存在し得ないことが信じられているからだと思う(このレビューのVII-Bの最後のあたりの議論).

それでもわざわざ二次元系で数値計算をしたということは,今回のプロトコルを用いたら二次元でもGCOが観察されることを確信していたからだろうか(確信さえあれば二次元の方が数値計算は楽やし)??

 

Hard sphere系なので圧力無限大の点としてJamming転移点(実際はJammingする際の密度がどのように圧力を無限大に持っていくかのプロトコルに依存するので相図上ではJamming転移線をなす)が定義できる.

このJamming転移線にどのように近づいてもJamming前にGardner的な振る舞いにぶち当たってしまうらしい.

いわゆるOrdinary glassではGardner的な性質の発現による"緩和"の他に,シンプルにbasin間を移動するエイジングも存在するからGardner的な性質が見えにくくなっているんだよ,という話らしい.

 

全体的にすごくきれいにまとまっていたが,個人的にちょっと残念だったのはmarginal相がしっかり定義されていなかった点.

図1aとかを見るとordinary相からの圧縮によって到達できる限界点みたいなことになっていそうな感じがするけど,数値的な結果だけからそう言い切ることもできないしクリアに定義できなかったのだろうなとは思うがちょっと寂しかった.

でも図1cのようなUltrastable相とMarginal相の概念的な関係をexplicitにpresentした論文は初めてではないかと思う.

これは「そういう理解で良かったのね」と思えてよかった.

 

 

[2209.11098] Active Glassy Dynamics is Unaffected by the Microscopic Details of Self-Propulsion

2013年くらいからActive Glassが流行っている.

たとえば論文1論文2論文3論文4論文5あたりを読むと色々重要なところはつまみ食いできるかもしれない.

(論文1はactive系と外力駆動系が本質的に違い得ることを示した論文で,論文5はレビュー.論文2,3は初めて論文1の予言を数値的に示したもので論文4はActivenessの強さに対するガラス的動力学の不思議な非一様依存性について調べた論文).

 

これまであまりActive matterとしてのモデリングの詳細の影響を比較した論文はないと思うが,この論文ではモード結合理論と数値計算により代表的な自走粒子模型(Active Brownian ParticlesとActive Ornstein-Uhlenbeck Particles)で観察されるガラス的動力学の発展のようすを比較している.

少なくともこの2つのモデルに関してはモデル詳細依存性は観察されなかったという結論になっている.

実際,結果は定量的にめちゃくちゃ一致している.

短時間でもめっちゃ一致しているのが興味深い.マクロな密度場を見ているからということか?

 

[2209.11049] The Kauzmann Transition to an Ideal Glass Phase

例の本"Spin Glass Theory and Far Beyond - Replica Symmetry Breaking after 40 years"の11章?

理想ガラス転移の話.

 

[2209.10869] Enskog kinetic theory of binary granular suspensions: heat flux and stability analysis of the homogeneous steady state

Abstractによると,Enskog理論を多成分系に拡張する,という話は2020年頃に始まったということだろうか?

この論文では2020年の論文で提案された手法を用いて熱に関連した4つの輸送係数を新たに解析的に計算したということらしい.

そして線形安定性解析をすると均一な定常状態はstableということらしい(longitudinal,transverse両方).

Free-cooling gasでは一旦unstableになってclusteringするイメージだったが,定常状態だとstableという理解になるのか?

微妙にsetupが違う(background gasみたいなものの有無)先行研究ではunstableになるらしいので結構ややこしい話なのかもしれない.

 

[2209.11021] Generalized Langevin dynamics simulation with non-stationary memory kernels: How to make noise

メモリカーネルがnon-stationaryなときのLangevin方程式のノイスを真面目に数値計算するための方法についての論文.

ミクロなLiouvillianが陽に時間依存性を持つ系を対象に射影演算子法で粗視化してLangevin方程式を導出した場合を想定しているらしい.