【A】8/19登場分(3+2報)

 

[2208.08793] Shear hardening in frictionless amorphous solids near the jamming transition

みんなcompressionでjamming転移の議論しとるけど,せん断かけたときにもなんか臨界性出とるで,という報告.

このShear hardeningと呼ばれる現象の起源はcompression系では観察されないらしい.

Abstractの最後の一文がすごい:"Through the establishment of physical laws specific to anisotropy, our work completes the criticality and universality
of jamming transition, and the elasticity theory of amorphous solids."

 

検討されているのは体積一定での準静的せん断下の摩擦なしharmonic soft sphere packingの諸々の応答のようす.

せん断印加前の初期配置をギリギリのjammed stateにした場合(圧力がほぼ0ということ)でも,その配置の準備をどのくらい真面目にするかによって応答が変わるらしい.

具体的にはjammed配置生成前の配置のannealingの度合いに依存する(これによってjamming転移点自体がけっこうかわることが知られている):poorly-annealed系では系の応力応答は間欠的に有限の値を持ったり液体的にゼロの値を示したりするが(これは有限サイズ効果によって液体固体転移しているという解釈がある),well-annealed系では今回の論文の主題であるshear-hardeningが観察される.

ちなみに圧力が十分大きくなるとこの効果は見えなくなるらしい.

この論文ではwell-annealed系を対象に圧力依存性を調べているが極端にpoorly-annealedでなければ結果はrobustらしい.

 

このhardeningはsofteningの後に起きる現象で,せん断によるメモリの消失が原因らしい.

また,ミクロな起源として(1)相互作用contactの増加(2)異方性の増加とその異方性の長距離相関が挙げられることを弾性論で示しているらしい.

 

 

 

[2208.08577] Non-reciprocal frustrations: time crystalline order-by-disorder phenomenon and a spin-glass-like state

Non-reciprocal phase transitionsで有名な著者による論文.

フラストレート系なんかではorder-by-disorderとかspin glass相とか知られとるじゃろ?非平衡なconflictのsourceからでもそういう現象のdynamical versionが出ても良いのじゃ,そう,non-reciprocal interactionsによってね.という論文.

めちゃくちゃ面白い.

イントロの後の1章?"THE EMERGENCE OF “ACCIDENTAL DEGENERACY” OF ORBITS"ではめっちゃわかりやすく大事なことがまとめられていた.

 

2章のorder-by-disorder 時結晶の部分は一旦飛ばさせていただいたが,3章のspin glassのところは導入部分から非常に勉強になった.

実はnonreciprocal interactionによってspin glass相が現れるかどうかについての先行研究はけっこういろいろあって(しかも多くは80年代?),否定的な結果が報告されてきていたらしい.

しかしいずれもgepmetricalなfrustrationが入ってしまっていたのでpureにnonreciprocityの効果が評価できていなかったという問題意識からこの論文ではより単純化したsetupとしてopen boundaryの最近接相互作用一次元XYspin系を考えている.

相互作用をnonreciprocalにするかどうかによって振る舞いが定性的に変化している(図5,6).

nonreciprocalのcaseでは時間相関関数がpower-law decayしているという意味でspin glassに似ている.

 

著者の方の所属が自分の認識と異なっていて少し驚いた.

 

 

[2208.08821] Combined Description of Pressure-Volume-Temperature and Dielectric Relaxation of Several Polymeric and Low-Molecular-Weight Organic Glass-Formers using 'SL-TS2' Mean-Field Approach

two-state Sanchez-Lacombe模型という最近考案された平均場模型で8つの異なる物質についてのα緩和時間と圧力-体積-温度データを記述してみせるという話.

とてもおもしろそうだがformatが辛い(arxivのabstractページで「PDF only」というのを見ると辛い気持ちになる;この原稿はなぜか途中でフォントも変わりまくるので本当に辛いので理論の概要のななめ読みすらできなかった).

 

Lattice-baseで液体っぽい領域と固体っぽい領域,void領域があると考え現象論的な自由エネルギーを書き下すという理論か?

Flory-Huggins理論に似ている.

固体・液体っぽい領域はそれぞれある大きさの協調的再配置領域を持つとして,その大きさは液体の方が大きいという仮定が置かれている.

(Adam-Gibbs的な考え方では逆が自然な気がするけど何かを勘違いしているのかもしれない)

こんな現象論でこれだけ実験結果がcollapseするということはなにかしらの工夫があるはずなので(fitting parameterということはないだろうし)出版版で勉強したい気持ちがある.

 

 

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機械学習関係と思しき気になる論文のメモ.

 

[2208.08850] Unsupervised Interpretable Learning of Phases From Many-Qubit Systems

タイトルの通りのことが一般化できたら無敵やんという意味で気になるのでメモ.

 

[2208.08862] Frequency propagation: Multi-mechanism learning in nonlinear physical networks

新しい学習法の提案ぽい?