【A】8/2登場分(3報)

[2208.00981] Spin glass experiments

スピングラス実験.

2023年に出版予定the 2nd edition of the Elsevier Encyclopedia of Condensed Matter Physicsという辞典?向けの記事らしい.

文献を除いて22ページ,引用文献には通し番号がついていないが6ページ分弱.

 

スピングラス関係の実験の話がきゅっとまとまっている資料はありがたい気がするし目を通してみたい.

(目を通してみたいリストで辞典が作れそうなくらい溜まってきている.)

 

 

[2208.01011] Influence of the coordination defects on the dynamics and the potential energy landscape of two-dimensional silica

Fragilityの変化についての話だった.

最近出たPRLの論文のfull paper版だな?と思ったら全然違う著者だった.

potential energy地形,つまりInherent structureのポテンシャルエネルギーの観点(具体的にはlow-energy cutoff)でFragile-to-strong転移の議論ができることが3次元シリカ系で示されていたらしく,そのunivesalityやミクロな起源を知りたいというmotivationで対象を二次元シリカにしてdefectなどを具に観察している.

二次元でも同じようなことが起きているし,定性的に似た振る舞いをする構造指標を見つけることに成功している.

非常に興味深い話だが,お恥ずかしながらそもそもFragile-to-strong転移があるのを知らなかった.

シリカはStrongだ,みたいな風潮がありますさかいにな.

 

 

[2208.00349] What Do Deep Neural Networks Find in Disordered Structures of Glasses?

久々に論文を投稿しました.自分の論文です.

ガラスの特徴的な動力学を予測できるような構造指標を探す試みというのは長く続けられてきていましたが,対象にする系ごとにいい感じの指標を個別に見つけるいたちごっこのような状態が続いていました.

しかし2018年に様相を一変させる指標が日本の研究グループによって発表されました.

この指標を使うと実に広い範囲の様々なガラス形成系ダイナミクスが十把一絡げに説明できます(十把一絡げの使い方は合っているのだろうか).

個人的には2つ目のNature Communicationsの論文の図5を見たときにすごすぎて笑ってしまいました.

しかしこの指標ですら完全に万能というわけではなくて,代表的なガラス形成系であるKob-Andersen系(KAM)ではうまくいかないということが著者ら自身によって言及されていました.

 

そういう経緯で本研究ではKAMでもそれ以外でもうまくいく指標を自動で生成してくれる機械学習システムを構築しました.

本手法ではまず畳み込みニューラルネットワークを用いて液体とガラスのランダムな構造の分類問題を扱います.

次いで,Grad-CAMと呼ばれる手法(このサイトなどがわかりやすく解説してくれています)を用いて分類の根拠とした構造を抽出しました.

つまり,AIにガラスと液体の区別をさせて,ガラスをなぜガラスと判定したのかを聞いてみたということです.

この抽出された構造がガラスの特徴構造じゃないか?と思ってダイナミクスとの相関を調べてみたら割としっかり強めの相関が出ていたよ,というのが主結果になります.

 

本手法では学習にあたってダイナミクスの情報は一切参照しないのですが,ダイナミクスの情報をバリバリ与えて学習させるグラフニューラルネットワークを使用した手法と同程度のダイナミクス予測性能を達成したのが我々自身驚きでした.

また,ダイナミクスがどの程度robustに構造で規定されていそうかを調べる意味で,同一のガラス初期配置を用いていろんな温度でダイナミクスを観察してみました.

すると,結構広範囲の温度域で観察された結果がビタッと一致するという結果になりました:図4.

(plotの仕方が特殊でややこしいので詳細はここでは説明しません)

これはダイナミクスが構造にがっつり支配されていることの傍証だと我々は認識しています.