【A】8/18登場分(6+6報)

[2208.08162] SAT-UNSAT transitions of classical, quantum, and random field spherical antiferromagnetic Hopfield model

制約充足問題を考える際,自由度に対して制約の数が少なかったらすべての制約を充足可能だが,ある限界を超えると充足できなくなるで,という限界が存在しますね,というのがSAT(satisfaction)ーUNSAT(unsatisfaction)転移.

転移というからには何かしらの平均場模型で表現してあげて,その理想的な性質を理論的に調べてみたいものであり,離散自由度系に対するSAT-UNSAT転移の平均場模型は色々提案されてきたが連続自由度系に対してはつい最近ちらほら検討されはじめたところですね,というのが問題意識らしい.

これまで提案されたモデルは複雑すぎて,解析に際していまいちレプリカ理論のような物理的意味付の困難な近似を導入せざるを得なかったということで,この論文ではより単純な模型を提案している.

提案模型では低エネルギーでの振る舞い(緩和時間とか)を支配していそうなHessianの最小固有値が簡単に計算できるうえ(今回の文脈ではこれによって動的臨界指数zがツルンと求まるという意味で重要?),量子ゆらぎやランダム磁場の効果も考慮可能らしい!!

短くまとまった論文だがちゃんと量子系もランダム磁場ありの系も全部扱っている.すごい.

 

つい最近(今月頭)同じ著者が投稿していたランダム行列でのBose-Einstein凝縮の話も関係していそう.

いずれも単著やのに驚くべき投稿ペースだ.

 

[2208.08081] Intrinsic Instabilities in Fermi Glass

Fermiガラスはlocalな短距離相互作用の擾乱に対して不安定であることを示したという論文?

一般的な設定のもとで一次の摂動論を考えたらそう示せるという話らしい.

Fermiガラスという言葉は最近たびたび耳にするがどういうものかわかってないのであれだが,今回の話はFermiガラスの研究をしている人的には辛い話なのではないかという気がする.

高次の摂動の効果でなんやかんや安定化される的な話になったりしないのだろうか.

 

[2208.07924] Drag force on cylindrical intruders in granular media: Experimental study of lateral vs axial intrusion and high grain-polydispersity effects

粉体相中でのcylindrical intruderのdrag forceを実験で測定したで論文.

 

[2208.08032] Screening and collective effects in randomly pinned fluids: A new theoretical framework

いわゆるランダムピン系の理論を作ったら先行研究の数値計算結果とめっちゃ整合したで,という論文.図3を見るとたしかに結構合っている(α緩和時間の比較).

Elastically collective nonlinear Langevin equation(ECNLE)というものをベースにした理論らしく,対象系は単一成分のhard sphere系(ただし一定数の粒子はランダムピンされている).

"This pinning process has no significant effect on the structure. " とサラッと書いているが,それはそうなんだろうか.極端に転移点から離れなければそうなのかもしれない.水を対象にした数値計算でも実際そうだったらしい.

 

式1で急にrandomピン系におけるピンされていないmobile粒子を対象にしたdynamic free energyの表式が現れる.

これとcage size以上の変位場の流体方程式4,α緩和時間をミクロな緩和時間的なもので表す式10あたりが大事な式ぽいが1と10については先行研究を参照しないと詳細は書かれていなかった(各項のお気持ちは書いてある).

おそらく式9の実効的バリアの表式をECNLEと呼ぶのだと思う.

 

[2208.08419] Microscopic Activated Dynamics Theory of the Shear Rheology and Stress Overshoot in Ultra-Dense Glass-Forming Fluids and Colloidal Suspensions

なんと驚いたことに上の論文に続いてこの論文でもECNLE理論に立脚している.

ポンチ絵があるので上の論文よりも理論の概要は拾いやすそう.

 

 

[2208.08436] Structural relaxation, dynamical arrest and aging in soft-sphere liquids

この論文ではnon-equilibrium self-consistent generalized Langevin equationというものを用いて解析が行われている.

Brownian simulationの結果とめっちゃ合ってそうに見える.

化学ポテンシャルの密度場による汎関数微分\epsilonと呼ばれている)を使って動的構造因子の時間発展を記記述してやろうという理論に見える.

ポイントは終状態での\epsilonの値さえわかれば良いということか?

もう一つ時間依存のmobility関数も出てきているが,これについては経験的に見積もりの式が与えられているということらしい.

改めて色んな理論や検討があるのだなと感じる.

 

 

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多すぎて全然目を通せていないが以下の論文たちもタイトル的に面白そうだった

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[2208.08403] Structural properties of liquids in extreme confinement

Hele-Shawセルみたいなものの平板間間隔をどんどん小さくしていき擬二次元系にしたときの各種振る舞いを調べている.

理論的な予言との対応も見ているぽい.

 

[2208.08178] Theory of viscoelastic adhesion and friction

粘弾性体を剛体基板上で引きずり回したときに現れる実効的な摩擦についての新しい理論の提案?

摩擦の起源はまだまだよくわからんねという話があるけど,最近効いたこの話は非常に面白かった(粘弾性体ではないけど).

 

[2208.08204] Scaling theory of critical strain-stiffening in athermal biopolymer networks

ガラスの低周波物性を徹底的に測定することに定評のある二人が似ているが一見異なるテーマで興味深い論文を出していたので気になった.

 

[2208.08301] The grammar of the Ising model: A new complexity hierarchy

タイトルが非常に魅力的だった.

Isingモデルのcomplexityを基底状態求めるための計算量で測定するのはちょっと雑すぎないか?という話.

チョムスキーヒエラルキーなども出てきていて,とてもおもしろい図1だった.

 

[2208.08121] Scale free chaos in swarms

これもタイトルが非常に魅力的だった.

Swarmという言葉は結構曖昧に使われている印象があったが,この論文を読むと「動的臨界指数がz=1である」など結構かっちりした定義がされていたりもするのかもしれない.

タイトルは一般的な話というわけではなくてharmonic potential中に閉じ込められたVicsek模型のswarmではそういう性質が見られるという話っぽい?

 

[2208.08266] Solving nonequilibrium statistical mechanics by evolving autoregressive neural networks

これもやはりタイトルが非常に魅力的だった.

非平衡系の時間発展を確率分布の意味でうまく記述する方法の提案?

構造ガラスの動的拘束模型を使って何かしらの検証も行っているらしい.