【A】8/25登場分(7報)

このエントリーで記念すべき100記事目となる.

 

[2208.11648] Theory of melting of glasses

著者の所属情報が途中で途切れていたり,アブストラクトの第1文が「Glassy matter like crystals resists change in shape.」という衝撃なものだったり,続く第2文ではVogel-Fulcher則がVogel-Vulcher則と書かれていたり(論文全体を通してVulcherで統一されていた:いやいや,VFT lawて言いますやん)冒頭から色々すごかったが,内容は面白そうだった.

 

方向自由度を持った非対称な局所的欠陥が埋め込まれた連続体模型を考えるらしい.

この論文の模型などとは異なり,ここでの欠陥というのはいわゆる局在振動モードやShear transformation zoneみたいなものとは違って,locally-favored structureのようなものを想定している?

例えば四面体構造のようなものがあって,周囲の状況に整合するように回転するという意味で回転自由度を有すると書かれているっぽい?

このDefectsは角度依存性も持ちながら1/r^3で減衰するpotentialで相互作用するらしいがその出処がわからなかった.

弾性係数についてのくりこみ群解析と,三次元におけるdefectsのfugacityの計算を行ったらしい.

fugacityがある転移温度T_0未満では有限になることが示せるそうだが,この転移点に上から近づいていくと構造エントロピーもゼロになっていくらしい.

つまりこのT_0はカウツマン温度に対応していそうとのこと.

ほんまかいな.

全然詳細が追えていないがこの通りのことになっていたらめちゃくちゃ面白そう.

こういうlocalな回転自由度のみでeffectiveにplastic eventsに伴うtopological changeみたいな効果が反映されているのかどうかが気になりどころ.

 

 

[2208.11588] Relaxation dynamics in amorphous alloys under asymmetric cyclic shear deformation

アモルファス固体に周期せん断をかけてその応答から色んな系の性質を探る試みはいままで色々なされきた.

こうした研究では,ひずみゼロの状態を中心にしてサイン波型のひずみを印加するのが通例であった(\gamma(t)=\gamma_0\sin\omega tという歪み\gamma(t)をxy成分に与える,など).

この論文では\gamma_0だけ歪みを与えた状態を中心に,0\le\gamma(t)\le 2\gamma_0の範囲でサイン波を与えるような非対称なひずみを印加している:\gamma(t)=\gamma_0[1+\sin(2\pi t/T-\pi/2)/2]のような感じ.

 

この場合振幅\gamma_0の対称ひずみ(\gamma=0を中心にした歪み)の場合とyieldingの振る舞いが全然違うという報告が少し前にあったらしい.

非対称な場合は対称な場合における臨界ひずみよりも小さいひずみでyieldingが見えたり,臨界点付近でyieldingにいたるのに必要なサイクル数が膨大になるなどの性質があるらしい.

どこまでが先行研究の結果でどこからがこの論文初出の内容かはわからなかったが興味深い知見だった.

 

[2208.11643] Influence of the solid fraction on the clogging by bridging of suspensions in constricted channels

3Dプリンターで作った擬二次元流路内にコロイド分散液(non-Brownianということなので熱ゆらぎは無視できそう:直径500ミクロンくらい)を流してCloggingについて調べた論文.

確率モデルによる解釈も与えている.

 

実験的にはCloggingのようすが見たいので途中で流路が狭くなるところを作ってある(オリフィス構造というのかな?:以下オリフィス部と呼ばせていただく).

この論文では特にBridgingといって,オリフィス部に粒子がアーチ状に安定した構造を作ってしまうタイプのCloggingに注目している(図6がわかりやすい).

Introductionによると3種類のClogging mechanismが知られているらしい.

(i)Sieving:シンプルに流路に対して粒子が大きすぎて1粒子で塞いでしまうパターン

(ii)agrregation:壁面にどんどんくっついていってしまうパターン??

(iii)Bridging:粒子同士,および粒子-平面間の摩擦によって流路のすぐ上流部で安定したarch構造が形成されてしまうパターン

実際にはこの3つが複合的に起こるからかなりややこしい話になるらしい.

 

局所的な粒子の体積分率のほか,Clogging発生前にオリフィス部を通過できた粒子の平均個数という変わった量を用いることでいい感じにデータが解釈できるらしい.

そういうところにも確率モデルっぽさが現れているということか.

 

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[2208.11651] Rheology primer for nanoparticle scientists

Colloidal Foundations of Nanoscience (Second Edition)という本の11章らしい.

最近のこの本のチャプターをarxivにuploadしてくれる文化はとてもありがたいと思う一方で,出版社も絡んでるはずやと思うと意味がわからんな,とも思う.

まぁでも論文も同じか😉

 

[2208.11175] Universality and diversity in word patterns

11の言語を対象に単語の統計をとっていろいろ考えてみたという論文.

すべての言語でなんらかの単独のパターンが得られ,そこからのゆらぎによって文章が書かれた年代や著者を測定することも可能というようなことが書いてある.

興味深い.

 

[2208.11265] Interacting Dreaming Neural Networks

"reinforcement-unlearning dreaming periods" という概念に馴染みがない(睡眠学習のように学習させずに緩和させる的なことか?;というか他にも山程馴染みのない概念が出てきた)のでパッと見では内容がしっかり理解できないが,すごく面白そう.

 

フィリップKディック好きとしてはどうにか疑問文に持って行きたくなるようなタイトルだが,こういう短いフレージングもかっこいいな.

 

 

[2208.11136] Nishimori's cat: stable long-range entanglement from finite-depth unitaries and weak measurements

こんなタイトルの論文が出たらめちゃくちゃ嬉しいだろうなという論文.

しかし僕は犬派なので犬の方が嬉しい.