【A】5/6登場分(4報)
[2205.02265] Anomalous Fluctuations of Extremes in Many-Particle Diffusion
多粒子拡散において極端によく動いている粒子(Extremesと呼ばれている)のゆらぎの性質についての理論と数値計算.
離散一次元系上のTOYモデルを考えている(random walk in random environmentというらしく,そのうちここでは時間相関がshort-rangeのものを考えている):このモデルは手で解くこともできるという利点があるそう.
粒子間に相互作用(のようなもの:環境を通して間接的に相関を持つ)があるのとないのとでは平均的拡散挙動には違いが見られないがExtremesのゆらぎに違いが見られるらしい.
また,Extremesの挙動はKPZ普遍性クラスに関係しそうらしい(ここでのheightというんが何かはわからんかった).
数値計算の粒子数が常軌を逸したレベルで巨大(最大で!!Yahoo!知恵袋によると全宇宙の全原子数が程度という見積もりらしい)だったので大変驚いてしまったが,サプリを読んでみた感じ分子動力学や離散要素法のようないわゆる粒子ダイナミクスではないようだ.
おそらく式3のマスター方程式を数値的に解くにあたって,初期値としてのサイトに個の粒子がある状態を考えている.
それらは式3に従って時間発展することになるので,粒子数はいわば確率分布関数の解像度を決定していると思えば良いのだと思う.たぶん.
それにしてもすごい桁なので四倍精度にしてもまともには扱えないので色々近似しているよという説明がなされていたが正直ちょっとよくわからなかった.
窓ガラスの主成分であるシリカ(二酸化ケイ素)やケイ酸ナトリウムで作ったガラスに一軸引張り力を与えた際の応答を数値計算で調べた論文.
Motivationは割と物質科学寄りなのかもしれない:ケイ酸ガラスは当たり前やけどものすごく実用化されているのでその力学的性質は重要やということです.
ケイ酸ガラスはマクロな破断の前に塑性的な振る舞いをほとんど見せないbrittleな(脆性)物質の代表格だがミクロやメソなスケールで何が起こっているかについては諸説あったらしい.
特にductileな(展性)破断でよく見られるようにミクロなキャビティ(穴ぼこ的な何もない領域)が発生,成長,粗大化していく過程が見られるか?という論点が大事らしい.
この論文の結果としてはナトリウムなしの二酸化ケイ素ではbrittleだったがナトリウムがrichになるにつれてductileになるということ.
その他色々詳しく調べられているようだ.
Ductile-Brittle転移という観点ではこの尾澤さん論文のようにアニール深さが関係しているということやけど,それとの関連はどうなるのか気になりどころ.
また,シリカというとネットワークガラスやしfragilityがstrongになるやんけみたいな話もあるので(こっちの尾澤さん論文など)fragilityとの関係も気になりどころ.
さらに4/12登場のこの論文のstatementも合わせて考えるとなんかfragilityとannealing深さとductalityが一つにつながる気がしないでもないわね?
ちゃんとは読んでいないのでもしかしたらこの辺の議論もなされているのかもしれない(書かれていなさそう).
大変そうやけどちゃんと調べてみる価値はありそうね?
[2205.02486] Observation of the Boson Peak in a 2D Material
二次元物質で実験的に初めてBoson peakを直接観察したで,という論文.
今までなかったのを知らなかった.
実験はhelium atom scatteringという方法で行われたらしい.
サンプルは二次元シリカらしい.
測定が難しかったのかサンプル調整が難しかったのかすらわかりません.
コアと側鎖があるHATnという分子を用いた実験の話(いろんな熱測定をしているよう).
この分子はカラム状のmesophaseを作るdiscotic液晶のモデル系らしい.
コア部分と側鎖部分それぞれのα緩和に加えてガンマ緩和というものもあるらしい...
お恥ずかしながらガンマ緩和という概念を知らなかった.