8/16登場分その2(色々:6報)

[2208.07263] Large-scale frictionless jamming with power-law particle size distributions

みんなjammed packingの研究するときは計算コストにひよって粒径比1:10程度までしかやらんやろ?でも現実系はそんなもんじゃないやろ?まじめにやろうぜ?という論文.

そもそも1:10すら扱ったことないマンとしては耳が痛い.

 

この論文では粒径がべき分布になっている系で最大粒径比が1:100程度のものを扱う.

これは三次元系の場合,体積比でいうと1:10^6ということになる.

このくらい幅をもたせるとしっかり粒径分布を再現するためには粒子数も膨大にする必要があるが,この論文では400万粒子を扱ってこれに取り組むらしい(すごいんやけどちょっと少なくないか?)

粒径比に差があると何が厄介かというと,粒径比が同程度の粒子計算の際に用いられる色んな計算高速化テクニックが使えなくなってしまう.

例えば,MDやDEMのような粒子ベースの計算を実行するときには計算負荷の大半は相互作用の計算になる.

なにも考えずに全粒子ペアの距離を計算して,必要に応じて粒子間に働く力を計算して...ということをすると計算負荷は粒子数Nの二乗ということになってしまい,Nの桁が増えると太刀打ちできなくなる.

そこで通常はある程度相互作用rangeに入っていそうな粒子のペアだけを考えることができるように高速化を行い,計算量をN\log N程度まで小さくする.

しかし,粒径に大きな差があるときは上記のテクニックは上手くworkしない.

この論文ではneighbor binning法という最近開発されたアルゴリズムを用いることで400万という膨大な数の粒子を扱えるようにしている.

 

粒径分布を特徴づける冪指数\alphaと最大粒径比\lambdaを振りながらJammed packingを生成(constant pressure protocol)してその性質を調べているが,結果は結構複雑.

色々,こういう系特有の解析がなされていて興味深い:例えば図4ではcontact pairを拾ってきてその2粒子の粒径がどのように分布しているかを調べており,setupによって大きい粒子と小さい粒子が接触しやすかったり,中くらいの粒子を介しやすかったりという傾向の違いを定量化している.

 

 

[2208.06582] Coordinated Stress-Structure Self-Organization in Granular Packing

粉体系ではlocalな応力と構造が特定の相関を持つように自己組織化されているよね,ということでそういう相関を定量化する手法を提案している.

cell, cell order, cell orientation, cell stressという量を定義している.

まずcellは粒子間contactが形成されている点で囲まれた領域と定義されており,cellの中心はcellを形作るcontact pointsの重心(論文中の図1のポンチ絵がわかりやすい).

cell orderはcellを取り囲む粒子の数(このcell orderの統計的性質が色々面白い性質を示すことは先行研究で示されているらしい).

cell orientationはcellを楕円近似したときの長軸の向いた方向とcell stressの主軸方向の2種類を考える.

cell stressはちょっとややこしいがcellを取り囲む粒子たちのlocal stressの重み付け平均みたいなもの.

主応力比が摩擦係数等に依らずsingle curve(Weibull分布)にcollapseできることや,cellがthe local stress major principal axisの方向に配向することなど4つのstatementが提示されている.

 

 

[2208.06923] Predicting Creep Failure by Machine Learning -- Which Features Matter?

降伏応力未満の応力に対して長い時間をかけて材料が破断していくようなプロセスに対して機械学習を用いて予言を可能にしたいという試みらしい.

上記のような破断は実用上になることが多いというのは想像に難くない.

 

今後こういう機械学習を用いて複雑な現象を予言しようという試みは加速していくのかなという印象がある.

最近(むしろ少し前?)は機械学習分野では解釈可能AIという話が流行っていたしそのあたりの何らかの手法を使って色々やりまくるブームは来るのだろうか.

 

[2208.07309] Beyond Ising SK: m-vector, Potts, p-spin, spherical, induced moment, random graphs

"Spin Glass Theory and Far Beyond - Replica Symmetry Breaking after 40 years"の第3章.

きっとタイトルの通りのことが書いてあるのだろう.

 

[2208.07214] Generalization of Kuramoto model in vector product form

これもきっとタイトル通りのことが書いてあるのだろう.

 

[2208.06559] Petascale Brownian dynamics simulations of highly resolved polymer chains with hydrodynamic interactions using modern GPUs

NVIDIAの回し者か?というくらいGPUについての記述が多かったので著者リスト見てみたらNVIDIAの人がいた.

NVIDIAの人が著者にいると「中の人によるスペック解説だ!」という感想になる不思議.

petaとはteraの上で10^{15}という意味.タイトルはそのくらいの四則演算回数が必要な計算を行いました,という意味ぽい.

初めは10^{15}個くらいの粒子を扱ったのかと思ってしまったが,そもそもメモリ的にそんな演算は難しそうですね.

 

計算としてはpolymer chainのdynamicsを対象にしていて,ポリマーの構成ビーズ間に流体力学的相互作用(HI)も考えたいらしい.

HIはRotne-Prager-Yamakawa tensorでimplement.