【A】5/31登場分(8+3報)

Jammed solids with pins : Thresholds, Force networks and Elasticity
https://arxiv.org/abs/2205.14787

微小なピンが埋め込まれた系のジャミングに関する研究

動ける粒子よりも1000分の1程度のサイズのピン粒子を埋め込んだ系のジャミングの数値計算を行っている。
コンタクト数・コンタクト力分布・配位秩序・弾性などジャミング系の基本的な性質を調べている。
個人的には、通常のジャミング系ではベキ減衰するコンタクト力分布のtailが、ピン粒子のある系では増大する(Fig.6)という振る舞いが気になった。

 

古典解析力学非平衡熱力学の橋渡しをする理論を提案するで!という論文.

非常に興味深い試み.

Introが「本論文の構成」みたいな段落しかないというオラつき構成.

こんなオラついた論文は久しぶりに見た(この前やとtable salt論文が記憶に新しい:出版時には追記されていて悲しかった).

1カラムで数式多いめやから余白だらけな上に17ページと,意外と結構短め.

 

[2205.15193] Demon driven by geometrical phase

Maxwellのデーモンは情報熱力学の文脈で実装可能なことが示されたけど,ミクロな観測を厳密に行うデーモンの実装は現実的かというと少し難しいのではないか?

ということで,現実的なセットアップでも仕事の取り出しが可能な幾何学的デーモンを提案したで!という論文.

非平衡定常状態というのが一つ非常に大事な性質になっていて,サイクルを回したあとに非平衡定常状態になるまで待つというのを繰り返せば仕事が取り出せるという仕組みらしい.

問題意識も言われてみるとなるほどという感じで面白いし,解決策の候補を提示しているのがすごい.

 

[2205.15227] Geometrical approach to excess/housekeeping entropy production in discrete systems

これもある種の情報幾何学的解釈ということになるのでしょうか?エントロピー生成をexcess partとhousekeeping partに分ける幾何学的な方法を提案している.

化学系のようなStable steady stateを持たないような系でもwell-definedという点でHatano-Sasaの拡張になっているといえる?

さらにワッサーシュタイン距離に熱力学的speed limitの話を持ち込むことで最適輸送問題とも関係付けている?

話題の広がり方がすごいな...

 

ちなみにcond-mat.stat-mechは今日はいつもの倍くらいの量の論文が出ていたが(いつもは10前後だが今日は19),その中で一つ上で紹介した論文とこの論文が並んでいた.

いずれも幾何学エントロピーがキーワードになっていて日本の研究グループの論文だという共通点があるのでなんか良いなぁと感じたが,冷静になると別に何も特別良いことはなかった.

 

[2205.14920] Real-time modeling of three-dimensional granular intrusion

PNASにacceptされたんか?というformat.

三次元粉体系に任意形状の物体を落としたときのような状況を想定し,系の応答をよく記述するモデルを提案しているらしい.

Demonstrationとして粉体系に色々なintruderを沈めているなぁと思ってみていたら見覚えのあるうさぎちゃんも沈められていた.

うさぎちゃんを沈めている節はBunny Drillというすごいタイトルだった.

 

[2205.14898] Friction-dependent rheology of dry granular systems

タイトルがgeneralすぎて何を調べているのか予測ができなかったが,割とこのタイトルで違和感ない内容のように感じた.

摩擦ありの三次元粉体系にせん断を印加してレオロジーを調べている.

興味深い点は新たな無次元量{\cal M}を提案しているところ.

これは慣性の効果と摩擦の効果の比に対応するらしいが,いろいろな変数をそれなりにcollapseさせるのに成功しているように見える.

 

[2205.15067] Transient Rheology of Immersed Granular Materials

実験と数値計算(昨日の論文と同様,離散要素法でモデルかした粉体系に格子ボルツマン法によって流体力学的相互作用も導入している)によって水中の粉体の挙動を調べている.

仕切り板の片側にガラスビーズを積み上げて急に板を取り除くというセットアップらしい.

ここでも新たな無次元量{\cal G}が導入されているというところまではわかった.

 

 

[2205.14384] Hydrodynamic theory of two-dimensional incompressible polar active fluids with quenched and annealed disorder

John Tonerさんらのグループの論文.

アブストを見る感じquenchedでもannealedでもdisorderの影響の出方が同じぽい?

これはAnomalous hydrodynamicsのせいらしい...?

とても気になる話です.

 

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火曜日は原則少なめ対応としているのですが本日気になり論文が多すぎたため,以下の論文はメモ代わりに面白そうとコメントするにとどめます.

いずれも面白そうな論文であります.

しかしここ2日粉体関連論文が多いな?

 

[2205.14505] Signatures of irreversibility in microscopic models of flocking

 

[2205.15166] Self-healing (solitonic) slip pulses in frictional systems

 

[2205.14614] Universality in Anderson localization on random graphs with varying connectivity