【A】5/30登場分(4報)
濃厚粉体系の上に球など(impactor)を落としたときのDynamically Jammed Region (DSR)を調べている.
特に有効粘度と有効弾性率に主眼を置いており,それらを記述可能な現象論模型,DSR modelを提案している.
提案された現象論は数値計算と比較されているが,数値計算部分は格子ボツルマンと離散要素法をあわせたもので,流体の効果込みの粒子シミュレーションになっている.
モデル部分は著者ら自身の先行研究で提案したモデルに少し変更を加え,impactに伴い発生するforce chainがシステム底面までpercolateしていなくても弾性的寄与が現れるようにしているらしい(粘性項はパット見では理解が難しいが先行研究で丁寧に導出されていた).
Impactorの運動の周波数に依存して粘弾性的な振る舞いが現れるのだと思うとたしかに自然なように思う.
このモデル変更の妥当性を確認するために"foot-spring-body"系というモデル系を扱っているところがすごく興味深かった.
これは片栗粉分散液の上を走る人を模したような模型になっているようで,足部分と胴体部分が質量の無視できるバネで結ばれている.
提案モデルの表現能力が効いてきそうな上手いセットアップになっている.
図3を見ると提案モデルが数値計算結果をよく表現している.
[2205.13841] Liquid-liquid phase transition in deeply supercooled Stillinger-Weber silicon
シリコンの液液相転移は勘違いじゃないのか?本当にあるのか?という論点があったぽい(結晶化の影響を見たartifactじゃないのかという懸念があったらしい).
この論文で自由エネルギーの見積もりをしっかり頑張ることでこの問題を解決したと主張:液液相転移はあります!
あまりこういう計算はしたことがないが,N=2000くらいでも巨大系扱いなくらい計算が大変なのだなぁという印象.
図2を見ると結晶化を避けながらdouble-wellが発達してきているで,ということか?
(でもシリコンの結晶にQ6は適切なのか?)
図3を見ると4配位の割合はめっちゃ増えているように見える.
このdouble-spaced?形式はどうにも苦手で文章が頭に入ってこないが内容は面白そうなのでpublish版を楽しみに待ちたい.
[2205.14089] Numerical Simulations and Replica Symmetry Breaking
"Spin Glass Theory & Far Beyond" という特集号?本?向けの論文らしい.
Mezard氏,Parisi氏,Virasoro氏の本の現代版ということか.
実はここ最近の関連論文も同じ本のchapterだったのかもしれない.
三次元の数値計算結果によると,外場がないときはレプリカ対称性が破れたスピングラス相がありそうだが,外場が入ったらいわゆるAT転移の下部臨界次元が3より大きくなってそうという話を扱う章らしい.
Droplet理論の予言との比較にも言及している.
少し前に似た内容の論文を読んでいたところだったのですごい精度のDeja-vuかと思って混乱したが思い出せてよかった.
ちなみにこのわいが読んでいた論文は引用されていなかった.どんまい.
dust aggregatesの衝突に際して合一したり分裂したりというダイナミクスが発生するが,それらのダイナミクスに対しての粘性散逸の強さの影響を調べたらしい.
粘性散逸が大事だとは考えられていたがどう大事かはあまり考えられていなかったというのがmotivationとのこと.
粘性の強さを変えてもdust aggregateが分裂するかどうかの閾値となる衝突速度自体はほとんど変わらないらしい.意外.
粘性の影響は分裂後の破片たちの大きさの分布に影響するとのこと.
パラメータが多くて大変そうだが,獲得したい知見を抽出するために系統的に数値実験をデザインしてしているのがすごい.
個人的に興味深かったのは著者らは天文の観点での興味からこういうsimulationを行っているらしい点.
惑星形成のときに何が起こっていたかを知るのに重要ということか.
扱っている粒子の数理模型もガラス・粉体分野で普段みかけるものとは全然違うのも興味深かった.
粉体の文脈でこうした衝突を行っている例を見たことがある気がするが,結果を比較してみと面白いかもしれない?