【A】6/24登場分(2報)

[2206.11633] Microscopic foundation of the $μ$(I) rheology for dense granular flows on inclined planes

離散要素法で傾けた板の上においた粉体層の振る舞いを調べたレター論文.

システムは三次元で摩擦ありなし両方扱っている.

粒子は全部同じ大きさで,基板部も同じ粒子のassemblyで作っている.

基板が立方格子を組んでそうやから結晶化しそうな気もするけどいい感じに初期配置を生成するからそういうことはないという理解で良いのか?

SimulationにはLIGGGHTSというsoftwareを用いたらしい.

 

短い論文だがStatementは複数:

1.Dilatacncy law(Inertial number {\cal I}\equiv \dot{\gamma}d\sqrt{\rho_P/P}と体積分率の関係; \dot{\gamma}はせん断速度,dは粒径,\rho_Pは粒子の質量密度,Pは圧力)は摩擦の有無に関係なく\phi_C-\phi\sim {\cal I}^\betaと表現できるらしい(摩擦があってもなくても指数\betaが0.95くらいでいい感じに表現できていると言いたい?).ここで\phi_C\equiv\phi({\cal I}\to 0)jamming転移点のようなもので,もちろんこの\phi_Cは摩擦依存性を示す.

2.いわゆる\mu-{\cal I} レオロジーというか,マクロな有効摩擦係数\mu\equiv \sigma/P\sigmaはせん断応力,Pは圧力)とintertial number {\cal I}の関係も似た感じの式で\mu-\mu_C\sim {\cal I}^\alphaとなるが,このとき指数\alphaの値は摩擦のありなしで大きく変わる:摩擦なしでは\alpha\approx 0.4-0.5,摩擦ありでは\alpha\approx 1.0.ちなみに摩擦あり系の指数はミクロな摩擦係数には依らないらしい(回転自由度の有無のみで決まる??).

3.次元解析やエネルギー保存則的なもの(local powerとlocalな散逸の釣り合い:非平衡定常状態を仮定)から各種関係式を説明

 

3みたいな議論は個人的には大好きなので読んでいて面白かった.

諸々の物理量が究極的には板の傾け角度のみで記述できるはずということから,無次元量Pd^3/(k_BT)が板からの高さに依らず一定になるはず,という議論がけっこうcrucialだったように思うが,この洞察は面白かった.

ちなみにここでの温度Tは粉体温度と呼ばれたりもする平均運動エネルギー的なものだが,特に板からの高さ依存性も考えている.

 

残念ながら摩擦ありの場合については\mu-{\cal I}レオロジーの式の導出に成功していない.

導出にあたって散逸起源が粒子衝突のみに起因すると仮定しているが,摩擦ありの系ではもちろん摩擦に起因した散逸も無視できないためこの論文の議論では説明ができないとのこと.

とはいえ実は数値計算してみると{\cal I}が十分大きい領域では摩擦ありの系でも摩擦なしと同じscaling則に従うようになるらしい.

数値計算結果を見ると{\cal I}=0.5くらいで摩擦ありの系のcurveが摩擦なりのcurveと交わるやいなや摩擦なしブランチに遷移しているように見えるが,この辺の理解はあるのでしょうか?

 

[2206.11340] Fingering instabilities in binary granular systems

高質量密度で小さい粉体を上に,低質量密度で大きい粉体を下に敷いた状態で系をshakeしたらRayleigh-Tailor不安定性が出るよね,という数値計算&実験論文.

数値計算は離散要素法と流体計算を組み合わせているらしい.CDFDEM couplingというソフトウェアがあるのかな??

(逆に流体がない場合はどうなるのか少し気になりますね)

 

粒子間摩擦があるとRayleigh-Taylor的で,摩擦がないとRichtmyer-Meshkov的になるらしい(恥ずかしながら後者は初めて聞いた).