【A】8/10,11,12登場分(2+2+4報)
最近友あり遠方より(zoomで)来たるで溜め込んでしまったので3日分あります.
肋骨はだいぶ癒えてきて夜中に痛みで起きる回数が減ってきたしそこそこの運動強度の運動はできるようになった.
8/10登場分
[2208.04513] Vibration-induced fracturing in fine-powders
粉体はその流動化のしやすさからA~Dのクラスに分類されることがあるらしい(Geldartの分類).知らなかった.
その中でもクラスCの粉体粒子は特に流動化が困難なのでそのクラスCを対象に流動化特性を色んな条件下で調べ倒そうという実験論文.
パラメータもかなり多いのでどう料理していいか難しそうなお題だが,流動化に伴う粉体層の破断に着目してうまく知見を引き出せている.
ただ,図の見方は難しい.
以下ですべてかはわからないがこの論文で得られた知見として
・相図上に4つの異なる相が現れる(consolidation, static fracture, dynamic fracture, convective fracture)
・consolidation相とfracture相の境界は無次元化した加振強度に依存
・Dynamic fracture相でのdecompaction wave propagating speed (ひびの伝播速度のこと?)は加振強度に依らない
・Geometry依存性を調べると円形で半球の底になっているものがもっとも効率よく流動化可能
などが挙げられている.
containerのgeometryにも依存するというのはsimulationでバルクばっかり見ているとなかなか出てこない発想だなと思った.
系がかなり複雑だが,こういう相図の理解を目指す理論・数値計算もそのうち進展していくのだろうか.
[2208.04397] Entropy of rigid k-mers on a square lattice
k-mer(k個の粒子が剛体棒状になったもの)がsquare latticeを埋め尽くすときの構造エントロピーを計算したという論文.
transfer matrixを使って数値計算でestimateしているということか?
2粒子のみが結合したdimerについては厳密解が求まるらしい.
8/11登場分
[2208.05295] Resolving entropy contributions in nonequilibrium transitions
非平衡では温度や圧力はいまいちうまく定義できないので,それらに立脚して非平衡相転移なんかを記述するための一般的なフレームワークを構築するのは難しい.
一方,エントロピーは非平衡系でも平衡系とconsistentな形の定義でうまくworkしているように見えるので非平衡系の熱力学-likeな議論はエントロピーでしたらええやん,という話はある.
しかし素朴にShannonエントロピーを計算しようと思うと,確率分布関数を完全に書き下さないといけない問題がでてきて,一部の解析的な性質の良いモデル系以外で測定するのは現実的ではないやないか問題が存在する.
この論文では着目自由度以外についていい感じに周辺化したりして相関関数からエントロピーのupper boundを得る方法を提案している.
ある種の転移が起きた際には一部のミクロな自由度に起因するエントロピーの寄与が急激に小さくなるなどするので転移が検出可能になると主張されている.
相関関数は任意の系で数値計算でも実験でも測定可能というのが大きなメリット.
この論文ではVicsekモデルの秩序-無秩序相転移の数値計算結果と粉体実験における結晶-非晶質hyperuniform相転移を対象にdemonstrationを行っている.
有限サイズスケーリングは調べずにシステムサイズ固定でパラメータ変化に対する秩序変数の変化の仕方と提案するエントロピーの見積もりの変化を比較している.
定性的にはよく整合していて興味深い.
色んな自由度についての相関関数で測定した結果を並べることで転移に寄与する自由度を特定するという使い方ができるということらしい.
自分の系でも測定してみたくなる話だなと感じた.
[2208.05417] Quantum Glasses -- a review
"Spin Glass Theory and Far Beyond - Replica Symmetry Breaking after 40 years"の18章らしい.
量子ガラスなんもわからんマンとしてはこのお盆休みに対局をお願いしたい気持ちが強くある.
8/12登場分
[2208.05725] Nonphononic spectrum of two-dimensional structural glasses
ガラスの低周波モードをとことん観察することに定評のある著者たちの論文.
ガラスの基準振動モードを調べると,デバイ理論が予測するphononの他に謎の局在振動モードがあることが2016年位からわかりはじめてきた.
その局在モードは周波数の関数として経験的に冪的に振る舞うことが知られており(平均場でもそうなる模型がたくさん作られている),その冪の値は4くらいになることが多いが,少し小さくなるときもありこれまでに色んな議論があった.
本当に色々あった結果三次元ではかなりuniversalに4乗になると信じられている.
今回の結論は二次元でも4乗がuniversalだろうというもの.
しかし,ファイナルアンサー?と聞きたくなるくらい紆余曲折ある話題なので今後も注視していきたい.
[2208.05866] The RFOT Theory of Glasses: Recent Progress and Open Issues
RFOTについては最近WolynesさんのReviewが出たところなのに別のreviewも出てきた.
主眼が違うのでいいのかもしれないし,それだけ注目トピックということかもしれない.
そんな注目トピックのOpen Issuesを教えてくれるというのは良いReview論文ですね.
[2208.05935] When does an impacting drop stop bouncing?
子供にタイトルのような質問をされたときはこれを読むことにしようというメモ.
こんな質問をしてくれるように育ったらそれだけで父は嬉しい.
[2208.05937] Nonexistence of motility induced phase separation transition in one dimension
タイトルの通りの結論が一般に成立するとすると,交通渋滞はMIPSではないということなのか?
一方通行の場合はMIPSとそもそも呼ばないのか?
一般的な定義かはわからないが,この論文の定義でいくとreorientatioinがないと確かに駄目な気もする.