【A&Z】3/29登場分(4報+1本)
[2303.16192] Metastate analysis of the ground states of two-dimensional Ising spin glasses
二次元ゼロ温度Ising spin glass系でDroplet描像とレプリカ対称性の破れ描像のどちらが正しそうかを数値計算的に検証した論文.
Dropletっぽいぞ?という結論になっている.
ちなみに三次元ではレプリカ対称性の破れ描像勢がやや優勢らしいが,完全決着はついていないらしい.
色んな話があるんだなぁ.
[2303.15538] GlassNet: a multitask deep neural network for predicting many glass properties
材料開発的な観点でガラス物性を見積もるための機械学習的手法およびPythonライブラリ(その名もGlassPy!!)の開発を行ったという話.
予測可能な物性値の数が圧倒的で,85種類らしい(本文から引用:"such as optical, electrical, dielectric, mechanical, and thermal properties, as well as density, viscosity/relaxation, crystallization, surface tension, and liquidus temperature").
さらに最近説明可能AIとして流行っているSHAPを使って出力結果(できあがったガラスの材料物性)が入力(構成要素の物理化学的特性)の何と関係していそうかなどの解析もできるようになっているそうな.
ちょっと色々触ってみたくなるな.
単著だが,appendixの表がすごい.
これどうしたんやろ.手打ちは流石にない...か?
[2303.15915] Shear-thickening in presence of adhesive contact forces: the singularity of cornstarch
コーンスターチ系で観察されるシアシックニングはこれまでの斥力系で確立されつつあった描像とは異なっていそうだという話.実験論文.
コーンスターチ系では引力というか接着力が粒子間に働く効果が重要になってきるので特殊な機構でシアシックニングが起こっていそうだとのこと.
よくイントロの例で出てきていたけど特殊な例が出てしまっていたということか.
最近何かと役に立っている生成モデルを舞台に量子超越性を示してやろうよという論文だと思う.
しっかり比較するための方法論を提案して,実際それに則って古典的手法との比較を行い,量子超越性が確認され得ることを示している?
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久しぶりにZ(雑記)も付けてみた.
すごく気になるニュースが出てきたからだ:
マスク氏ら、AI開発の一時停止訴え 安全性の確立優先 | ロイター
人工知能の専門家らが先端AI開発をとりあえず6ヶ月感停止しないかと呼びかけたということらしい.
その間,安全性を担保するための共通規範の整備を先に進めたいという見込みがあるようだ.
この公開書簡にはマスク氏をはじめ業界の代表者を含む1000人以上が署名をしているらしいがオープンAIのCEOは署名していないらしい.
オープンAIが先端AI開発を中止したら何するねんという話になるから簡単には署名できないのかもしれない.
無課金ユーザーなのでまだGPT-4の力を味わったことはないが世界中に相当の衝撃を与えているらしい.
ちなみに最近気になってChatGPTに「お前はある意味アンドロイドだな?」と聞いた上で「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」と聞いてみたら『そういう機能は備わっていないですね.』と塩対応されてしまった.
【A】3/24,27,28登場分
最近このブログを始めて一年経ったらしい.
はてなブログからメールが来ていた.
そんなめでたいタイミングだが色々溜め込んでしまっていたので気になった論文リストをメモするだけになってしまった.
[2303.14850] Does von Neumann Entropy Correspond to Thermodynamic Entropy?
[2303.13905] A note on the renormalization group approach to the Central Limit Theorem
[2303.13038] Thermodynamic bounds on correlation times
[2303.13116] Thermodynamic bound on the asymmetry of cross-correlations
[2303.14499] Production of Porous Glass-foam Materials from Photovoltaic Panel Waste Glass
[2303.13908] Hydrodynamic Stability Criterion for Colloidal Gelation under Gravity
[2303.12887] Detecting low-energy quasilocalized excitations in computer glasses
[2303.15393] Probing semi-classical chaos in the spherical $p$-spin glass model
【A】3/23登場分(4報)
Structuro-elastoplastic (StEP) modelsという数理模型の提案がなされた話はこの記事で紹介した.
このモデルを用いてstructure, plasticity and elasticityがどのように外場印加時の塑性ひずみの局在化に寄与するかが明らかになるらしい.
[2303.12780] Active particles with delayed attractions form quaking crystallites
Perception-reaction delaysmの効果を数理模型に入れようという話.
昔この記事で扱った論文に対するreplyかと思ったらまた違う論文に対するreplyだった.
議論が活発になってて素晴らしい.
この活発さはNature姉妹誌というのと機械学習というのがでかいのかなぁ.
[2303.12172] Algorithmic Threshold for Multi-Species Spherical Spin Glasses
めちゃ長い.
【A】3/22登場分(3報+ARCMP)
[2303.12070] Tessellated granular metamaterials with tunable elastic moduli
機能のgranular metamaterialの話を実際に実験的に作ってみた論文が早速出ていた.
そのうち出るのではないかと思っていたが翌日とは思わなかった.
実験には3D printerを使ったらしい.
粉体系で詳細なデザインをする際にはたびたび3D printerが活躍しているイメージがある(これなど).
[2303.12045] Sculpting liquid crystal skyrmions with external flows
スキルミオンを形成している液晶系に外場として流れ場を与えたりして大きく歪ませたりしている.
数値計算と実験双方が行われている.
図7ではCollective motion of flowing skyrmionsも観察されている!
気候関係の理論の話.
Parisi先生,眞鍋先生と一緒に2021年にノーベル物理学賞を受賞されたHasselmann先生が提案されたHasselmann’s programというものが以下に画期的で気候学に大きな影響を与えたかが説明されていそう.
特に現代的な統計物理や応用数学の道具立てで説明した後さらに知見を深めるための方向性も提示してくれているらしい.
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arXivではないが今年のAnnual Review of Condensed Matter Physicsが2週間ほど前に出ていたようだ.
https://www.annualreviews.org/toc/conmatphys/14/1
【A】3/21登場分(2+2報)
[2303.10300] Designing mechanical response using tessellated granular metamaterials
Metamaterialデザインできる人respectマンにはすごく突き刺さる論文だった.
特に自分の専門に少し近いところでmetamaterialをデザインしているのでなるほどなぁという感じだった.
この論文の内容を理解する上で重要な前提知識が3つ存在する.
1.斥力相互作用する球(球と球の間の接触という概念がwell-definedになる)を使ってランダムな構造で空間充填しようとするとjamming転移という転移が起こる.数値計算的にはこれまでjammingはおもに周期境界条件の下で研究されてきた.
2.jamming点移転直上では圧力pは0だが,圧力の増大とともに弾性率も上昇する.このとき同じ配置の構造の変化を追いかけていくと,圧力の増大とともに粒子の配置換えが起こり弾性率が増していく.
3.粒子数のめっちゃ少ない配置では圧力を増やしてもこの配置換えが極稀にしか起きないことがわかってきた.
これらの知見からこの論文では,ごく少数の粒子で作ったユニット構造の繰り返しで作ったjammed配置はなんだか不思議な性質を持ちうることを示している:圧力の増大に対して弾性率が減ることもあるらしい!
ただ単にユニット構造を繰り返すだけだとただの周期境界条件なのでこれまでの研究と特に違いはないのでは?と感じるところだが,最終的には有限サイズの系を考えている点が大きく異る.
また,ユニット構造自体に壁を設けたversionなども検討している.
物性がcontrolできる利点の他にもユニット構造が粒子の配置換えを起こさないということは材料として繰り返し付けるという点も言及されていた.確かに.
ユニークで面白い.
[2303.11245] Fluid-Glass-Jamming Rheology of Soft Active Brownian Particles
Active Brownian Particles系にせん断をかけて相図を作った論文.
多分みんな興味は持っていたけどやっていなかった話だと思う.
しかし,パラメータが増えるのでやはり計算がめちゃくちゃ大変そうだった.
系統的にしっかり調べていてすごい...結果もかなり面白い.
Activenessの強さの指標であるペクレ数と粒子の体積分率の2軸で張られる面上での降伏応力の値を示した相図,図1がメインの結果で,それを説明する形で詳細な解析が色々なされている.
また,粘度のせん断速度依存性,つまりシアシニングなどについてもしっかり検討がなされている.
流体的な密度の薄い領域の低せん断速度極限の粘度の振る舞いはPe数でrescaleした有効温度(実際の温度より高く出る)を用いたGreen-Kubo公式によく従うことが示されている.
この意味ではActive系の性質は有効温度で記述できそうね!という気が一瞬する.
しかし,濃厚領域にシフトすると話が全然違ってくる.
降伏応力が関係してくるような超濃厚領域ではPassiveな系ではガラス的な振る舞いとJamming的な振る舞いが競合することが知られていたが,Activeな系ではこのうちActiveな振る舞いが消失するように見えることが示されている.
ガラス的な振る舞いはまさに熱ゆらぎの影響が強く聞いてくる部分だが,Active系ではなぜかこれが消失するということだった(つまり流体相の場合とは逆に温度が下がって見えるということ!).
粒子間衝突のタイムスケールとActivenessのreorientationのタイムスケールの関係でActivenessの影響がenhanced noiseっぽく見えるか引力っぽく見えるかの違いに起因しているのかなと感じた.
[2303.10900] Mpemba effect in driven granular gases: role of distance measures
[2303.10850] Effect of substrate heterogeneity and topology on epithelial tissue growth dynamics
【A】3/20登場分(3+2報)
Random磁場Ising模型についてのLecture note.
目次を眺めただけでも不勉強な自分は全然知らない話も結構あった.
RFIMの諸々はしっかり勉強していきたい気持ちはずっとあるがなかなか思うように進まないものです.
Aqueous foamsのcoarsen過程を記述する積分微分方程式は存在したらしいがそんなもの数値的に扱うのも大変じゃないかということで近似的な可解模型を作ったらしい.
実験結果とも比較していて,このモデルで記述できる量については非常によく整合していそうな結果が得られている.
the Principle of Maximum Caliberというエントロピー最大の原理の一般化が非平衡系に対して提案されていたらしい.
[2303.09666] Initiation of motility on a compliant substrate
[2303.10168] Inequality of avalanche sizes in models of fracture
【A】3/17登場分(2報)
[2303.09161] Quasi-localized modes in crystalline high entropy alloys
高エントロピー合金というすごい色んな種類(だいたい5種類以上らしい)の金属をほぼ等量ずつ混ぜてつくる系がたびたび話題にあがる.
主には今までにない材料の候補として材料科学的観点で研究されているらしい.
この論文ではそうした高エントロピー合金を対象に振動状態密度の低周波極限のようすを調べている.
構造がガラス的なときはもちろん,構造が完全にFCC的な結晶のときもω4乗則が観察されたらしい.
「それっておかしくね?」と一瞬思ったが,構造はFCCだが各サイトに位置する粒子種はランダムに配置されているので,粒子種によるdisorderが存在するということらしい.
それによってもω4乗が出るのはめっちゃ面白いが,格子を考えてランダムにバネ定数を変えた理論模型でも(有効媒質近似の下で)non-Debye則が説明できるという話があった気がするので冷静に考えたらそこはそういうものなのかもしれない.
しかし図3がまた面白く,結晶に近づくとWeibull分布の振る舞いに異常性が出るということらしい.
そうなのか.
全体的に高エントロピー合金を使って材料設計をするときには大事な知見になりそう.
[2303.09493] Anomalous crystalline ordering of particles in a viscoelastic fluid under high shear
タイトルの通りのことが起こるということだった.
面白い.
なぜこういう測定をしようと思ったのだろうか.