【A】11/29登場分(4+2報)

 [2211.15026] Towards Relating Fragile-To-Strong Transition to Fragile Glass

ガラスのfragilityについての研究は色々あるが,それを最近考案された格子模型で考えてみたで,という論文.

『昨日のEntropy crisisの話も格子模型やったなぁ.最近格子模型が流行ってるんかなぁ.』と思ったら同じ模型やったし同じ研究グループやった.

 

高温ではFragileっぽく振る舞っていたのに低温ではStrongっぽくなってしまうというFragile-to-Strong転移という現象が水やシリカなどいくつかの系で知られているらしい.

少し前にはこの論文も話題になっていた.

ちなみにFragilityとは系の粘性や緩和時間の温度依存性を表す用語で,温度依存性がアレニウス則に従うとき(semi-log plotで直線のとき)をstrong,アレニウスよりも急激な変化を示すときをfragileという.

Fragile系ではガラスの温度を少し高くするだけで急激に粘性が低下するのでfragileという気持ちなのだろう.

 

この格子模型ではサイト間の相互作用の強さの分布を変化させることでFragile-to-Strong転移を再現できたほか,転移が観察されるときにstretched exponential関数のstretch指数が最大になるという特徴がMDの結果と一致したらしい.

素朴にはシリカのようにlocalな組み換えで構造緩和が起こる系ではアレニウス則に従いStrongになって,系全体が協調的に構造変化せざるを得ない系(というかそういう協調的再配置領域の大きさが温度の低下とともに増大していく系)ではsuper-アレニウス的なfragileになるという期待があるが,最近はそんなに単純じゃなさそうよという話が多いらしい.

今回のモデルにもそういう機構は組み込まれていないように感じる.

つまり何でfragilityが決まるんだぜ?という気持ち.

 

 

[2211.15283] Double-replica theory for evolution of genotype-phenotype interrelationship

KK先生たちの論文.

進化についての統計力学的モデルを作りたくて,遺伝子型と表現型の関係に注目して色々あってDouble-replica法というものにたどり着く論文らしい.

問題意識としては進化は遺伝子の変化が決めるはずやけど,その遺伝子の変化を決定する自然淘汰は表現型(実際に現れる形質のことらしい?)で決まるし,そいつらの関係も変化していくやん?という複雑な話を考えたいということらしい.

 

表現型をスピン配置,遺伝子型をスピン間の相互作用行列として表現してみようという先行研究は存在したらしい(それもKK先生たちの論文).

発送が素晴らしいな?

 

 

[2211.14410] Topological transitions, turbulent-like motion and long-time-tails driven by cell division in biological tissues

二次元細胞シートのダイナミクスが乱流っぽいなという話.

ポイントはレイノルズ数がめっちゃ低いのにそういう現象が観察されるというところ.

微生物分散系(低Re)や低速せん断下の粉体系(Reに相当するものがやはり小さい)などの非平衡系でも似たような話があるのでそのあたりとの関係が興味深い.

粉体系の場合は乱流的というよりAvalanche臨界性が効いているのでは?という感じがしているのでそのあたりとの対応も気になる.

 

Kolmogorovの5/3乗則が見えたという話だが,二次元系で指数が5/3になってしまうのは良いことなのだろうか?という点は少し気になった.

 

[2211.15015] Discontinuous shear thickening in biological tissue rheology

細胞組織のレオロジー調べるには内的なActive stressと外力双方考えないと駄目だろ!今まではどっちかだけやないか!という論文.

Activeなmotilityを持っているVertex modelにせん断外場を印加することで双方の効果を取り込んで計算してみた結果,パラメータに依存してHerschel-Bulkley的な降伏流体的振る舞い,連続シアシックニング,不連続シアシックニング,ニュートニアンなどいろいろな振る舞いが観察されたという報告.

相図は組織を構成する細胞のmotilityの強さを決定するパラメータvと細胞のちょうどいい形状をcontrolするパラメータp_0を軸に作成されている.

 

Vertex modelは面白くてパラメータp_0を変化させると細胞のちょうどいい形状に依存したjamming-unjamming転移が観察されることが知られている

 

不連続シアシックニングについて粉体系を対象に今まで知られていた知見と整合している部分についても言及がしっかりされている(force chain percolationとか間欠的な高応力状態と低応力状態の遷移など).

 

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[2211.15073] Explosive rigidity percolation in kirigami

explosive percolation transitionという概念があるらしく,それを使って切り紙デザインをしたという話?

いろんな概念があるんだなぁ.

 

[2211.14657] Variational Tensor Neural Networks for Deep Learning

最近よく聞くTNNの新しいやつか?