【A】9/27-30登場分(6報)
出張などでチェックできていなかった分まとめてざっくり.
[2209.12433] Deep generative model super-resolves spatially correlated multiregional climate data
ブログ趣旨からは大きくズレるけど紹介.
気候変動は人類みな心のどこかで気になっていることでしょう.
そうした気候変動を予測する上で現状で最も科学的なアプローチは数値計算ということになります.
特に最近は過去のデータをかなり正確に再現できるようになってきていることから未来予測への信頼性も上がってきているため,各国政府が今まで以上に将来予測を重く受け止めそれに準じた政策が打ち出されるにいたっています.
大気や海洋は地球上を循環するため,正確な将来予測をするためには地球全体を対象にした全球計算というものを行う必要がありますが,複雑な気候モデルをそんな巨大な領域を対象に長時間計算し続けるのにはもちろん限界があります.
そこで,現状の全球気候計算ではだいたい経度緯度一度ごと程度の格子解像度での計算が行われることが多いようです.
これは赤道上では格子点間隔が100km以上にものぼることになり,こうした粗い解像度での予測結果は重要な意思決定には役立てられません.
そこでなんらかの方法でこの粗い解像度の情報を高解像度化したいのですが,もちろんここでは精度と計算時間の間にトレードオフ関係が存在します.
この研究では敵対的生成ネットワークをベースにした機械学習的アプローチによって高速・高精度での気候データの高精度化を実現しています.
特に気候データが持つ特徴的な空間相関の表現能力という観点では,従来の高精度な統計的手法に対して定性的ともいえるレベルで改善が見られています.
図4だけでも眺めてみてください.
[2209.12184] Microscopic reversibility and emergent elasticity in ultrastable granular systems
Emergent elasticityという概念があるらしい.
この論文はmechanical trainingをしたらultrastableな粉体系がほんまにできたで,というPRXの先行研究のデータをより詳細に解析したという論文.
上で触れたEmergent elasticityでよく記述できる振る舞いがみられていたらしい.
要チェック概念や.
粉体濃厚系にせん断を印加しするとせん断と垂直な方向に粒子が拡散することは知られていた.
この論文ではそのせん断プロセスが速いモードと遅いモードで構成されていることを見出したらしい.
下の論文のレター版.
[2209.13895] Slow and fast particles in shear-driven jamming: critical behavior
上の論文のfull-paper版.
数値計算の観点では,相変わらず扱っている粒子数とせん断速度の遅さがすごい.
こういうせん断下拡散の話はいーろいろあるので一回誰かが整理する論文を書くのが良いなぁと思う.
[2209.13239] Transition from granular to Brownian suspension : an inclined plane experiment
傾斜板上の粉体系の流動化という比較的よくあるセットアップの実験を行った論文.
しかし,熱ゆらぎが無視できなくなる領域も含めて検討を行ってみるとちょっと今まで粉体系ではないと思われてたサイズ依存性が見えてきたで,という論文.
こういうよくある話のちゃぶ台返し系論文は熱いですね.
しかも結果,池田-Berthier論文での議論みたいなのが実験的に観察されたという理解らしい!!
池田-Berthier論文10周年記念論文という感じだ.
[2209.12442] Ergodicity in glass relaxation
Abstractでは「射影演算子を使わないし,MCTではない」というようなことを言っているけど,これは正しいのか?
なんかあった気がしたけど見つけられなかった.
それはそうとこの論文の主張はすごい.
以下はConclusionからの引用.
"We find that the glass relaxation is ergodic. This is the main result we obtained in this study."
個人的には「そういうことじゃないのではないか?」と思ってしまった.
Glass transitionではなくてGlass relaxationの理論やから良い...のか?