【A】8/15登場分(3報)
トポロジカルデータ解析と教師なし学習を組み合わせてシリカガラスの特異性について調べたという論文.
なるほどね〜という上手い手法になっている.
シリカの密度の温度依存性を調べるとある温度で最大(この論文のsetupでは@約5000K)・最小値(同@約3000K)を示す特徴的なカーブになることが知られていたが,それがどういう構造的特徴を反映しているかは知られていなかったらしい.
この論文ではSi原子の1次元トポロジー(つまり輪っかですよね?)の変化が関係していることを明らかにしたらしい:密度が最大・最小になるとき両方で関係しているそうな.
ちなみにO原子どうしやSi-Oの結合のトポロジーはもっと低温で変化するらしい.
非常に面白い結果だったが欲を言うとシリカ特有の性質かどうかが少し気になった(特有であってもめっちゃすごい結果ですが).
2つの特徴的な温度(密度の値が最大・最小になる温度)がガラス転移関係の温度(onset温度やMCT温度,実験室ガラス転移温度など)と関係しているということになったら他の系でも測定してみたくなってしまう.
どうやって測定するのかわからないけども...
以下,トポロジカルデータ解析について
トポロジカルデータ解析というとPersistent homologyを使ったpersistent diagram(PD)というのが有名だと思う(というか僕はそれしか知らない:初出はこの論文?).
この論文でもそれを使用しているみたい.
PDはbirthとdeathという2軸で貼られた平面上に各"ring"の特性をplotして作成されると認識している.
birthとdeathというのは各"ring"が生成・消滅する時の粒子サイズであり,以下のように算出される.
- まず,解析対象とする点群を用意する.
- 各質点を中心とし,半径rの球を考える.
- 球径rを0から大きくしていくと,どこかのタイミングである輪っかが生成される(各質点が球を介してつながる)タイミングがある:これがその輪っかのbirth値となる.
- さらに球径を大きくしていくと,上で生成された輪っかが急で充足されて消失するタイミングがある:これがその輪っかのdeath値となる.
点群からbeforehandに何個の輪っかがあるかわわからないが,解析した結果輪っかが何個あるか・およびそのbirth値death値が得られることになる.
birth値を横軸,death値を縦軸にして各輪っかの値を散布図上にplotしたものがPDである.
定義上,各輪っかを表すscatter plotはすべてdaeth=birth直線の上側に存在する.
クラスタリング解析をかけるときは異なる温度で測定してきたPDの集合に対してクラスタリング解析をかけ,性質の似たPDを分類しているということだと思う.
なるほどね〜という上手い手法だ.
[2208.06055] Acoustically levitated lock and key grains
このちょっと前に話題になったPRX論文の著者らの新作.
鍵と鍵穴の関係にあるような特殊な形の粒子を作ってみて音波によって浮遊させた状態でmanipulateしてやろうかという話.
音波強度を大きくしていくと有効温度に対応するようなゆらぎが現れるようだが,それによっていい感じに鍵がはまったりはまらなかったりするということのよう.
特殊な形状の小さな粒子は3Dプリンタで作っているらしい.
今後そういうミクロな構造を作り込んだ粒子の自己組織化構造物の組み立てなどをこういう操作で行えるようになるということか?
[2208.06048] Exact solution for the Darcy law of yield stress fluids on the Bethe lattice
Darcy lawの厳密解ということで!?となった.
Directed polymerにmapして考えて,それとDerridaのRandom Energy Modelとの経験的な不等式関係を利用しているらしい.
確かにporus media内の浸潤のようすとTreeの様子は似ている.