【A】3/31登場分(6報)
arxivの論文まとめ記事は頭に【A】をつけることにしました.
ガラスとは直接関係ない論文ばかりになりました.
[2203.15883] Epithelial Tissue Growth Dynamics: Universal or Not?
細胞コロニーの界面成長はKardar-Parisi-Zhang(KPZ)なのかMolecular Beam Epitaxy(MBE:初めて聞いた)なのか論争があったらしいが,CellSim3Dというoff-latticeの細胞成長simulatorで色々検討した結果,条件(cell-cell adhesionの強さ)によってはKPZにもMBEにもなるという結果になっている(図3はKPZ,図4はMBEの臨界指数でよくcollapseしているということかな?).
こういうDiversityは進化の観点で大事だねという解釈も与えている:普段はuniversalityを崇めているけど生物系を想定するとDiversityがいいもののように捉えることもできて面白い.
ちなみにMBEクラスの方程式(式3)はKPZの界面成長項(非線形項)と界面張力項2つが拡散項と定数の成長率項に置き換わっている.
カーネル次数が4でランダムネスがquenchedじゃなくて熱的になったdepinning模型という感じ?
adhesionが弱いとMBEになるということは,界面frontでの拡散が成長の支配因子になってるということなので直感的にも納得しやすい結果.
KPZの界面のようすって海岸線感があるな?
個人的に以前から注目していた仕事が満を持してarxivに登場.
「壁がいっぱいあるときの流体の問題解くの難しいなぁ...そや!バクテリアに直接聞いたろ!!」の精神でいろんな環境を泳がせまくって検証:いろんな環境をmicrofabricationのデザインでシステマティックに実現.
実験だけじゃなくてSquirmer模型での数値計算もやっているのがすごい.結構難しいのにすごい.
αパラメータが-3ていうのは結構絶対値が大きい印象やけど実験との対応を考えるとそんなもんだったのか...
擬二次元系やと流れ場の減衰の指数すらまだ議論の種になっているというのは知らなかった.
[2203.16156] Microscopic origins of the viscosity of a Lennard-Jones liquid
液体の輸送現象についてはアレニウス則的な説明と自由体積的な説明とがあっていまいちどっちが正しいか判然としなかったのでLJ系で徹底的に調べてみたで論文.
液体相から超臨界状態まで網羅しているのが売り.
まだ精読はできていないけど,「アレニウス則は測定結果を上手く表現はするけど液相のダイナミクスは山越えで支配されてはいなさそうだからダメ」というよく目にする理由でアレニウス則が棄却されて驚いた.結局そこかい!!てなった.
一方,自由体積は同程度にデータの記述能力もあるしモデルパラメータもミクロな構造から決定できていいですね,という結論.
[2203.15839] Quantum Annealing and Computation
量子アニーリングの超ショートレビュー.引用文献数は23で,文献欄込で6ページ.雰囲気を知るのに良さそうやけど数式が出てこなさすぎて実はゴリゴリに背景知識要求する説もある?
[2203.16243] Theory of Critical Phenomena with Memory
タイトル見て「確かにそういうのもあるか」と思わされて,アブストの一文目でも「確かにそのとおりだ」と思わされた.ちなみに下の論文と著者同じ.
模型に時間方向にベキ的に減衰するlong-range相互作用をmemoryとして入れている(long-rangeは時間方向のことを言っているはず).
これによってhyperscaling関係式が破綻するようになるらしい.
そこまではそんなもんのような気もするが,時空をいい感じの有効空間次元に変換してあげるとhyperscaling関係が復元されるらしい!!
[2203.16245] Effective-Dimension Theory of Critical Phenomena above Upper Critical Dimensions
上の論文と同じ著者らの論文.
2203.16244は他の論文に割り込まれてて草(パターン認識分野の論文でした).
「優位でないが危険な変数」まわりの問題を解決するためにやはり有効空間次元を考えるらしい.
解決済みと思っていたのでちょっと問題意識から勉強する必要があるが,一度しっかり読んでみたい.
しっかり読んでみたい論文が溜まっていくな?