3月29日(一報)
[2203.14604] Creating bulk ultrastable glasses by random particle bonding
Ultrastable glassの新しいシミュレーション手法・実験手法の提案
(背景)
・ガラスになる前の平衡過冷却液体の温度を下げることで、出来上がったガラスの安定性を向上させることができる。
・こうした安定性の高いガラス(ultrastable glass)を作ることは大事(理想ガラスへの転移の存在の検証に必要、工業的にも優れた素材)
・これまで知られている手法としては、蒸着法(実験)、スワップMC法(シミュレーション)、ランダムピニング法(シミュレーション)がある。
・それぞれの手法の抱える課題として、
蒸着法 : 生成されるサンプルの異方性が強く、等方的なサンプルの生成が困難
ランダムピニング法 : 並進対称性が破れるため、動力学的性質が大きく変化する
が挙げられる。
(手法のあらまし)
・この論文では、random bondingという手法を提案している。
・文字通り、平衡液体の中からランダムに選んだ近接粒子ペアの間にrigidなボンドを入れることで安定性の高いガラスを生成する方法になっている
・ボンドの密度を変化させることで、系の有効的な温度を変化させることができる。
・この手法で生成したガラスは、バルクの動力学を記述できる。
・実験的な対応物も作ることができる
(数値計算+α)
・random bondingにより生成されたガラスの性質をみている。
・ボンド密度を上昇させると、中間散乱関数のプラトー領域が進展する(Fig.1)
・エイジングがでないこともみている(Fig.S3)
・ボンド密度を上昇させると、ガラスの「融ける」温度が上昇する(Fig.2)
・ボンド密度を上昇させると、降伏の様子が延性破壊から脆性破壊になる(Fig.3)
・パッチコロイドを用いた予備的な実験もしている
・塩濃度をコントロールしパッチコロイドの密度をコントールして、random bondingを実現
(感想)
・中々すごそうな手法だった(スワップMCもランダムピニングもやったことないから、細かい点はなんとも言えないけど。)
・降伏の振る舞いはスワップMC法で調べられた、平衡化温度に対する振る舞いとかなり似ている印象(これもozawaさんの仕事)
・ボンド密度を大きくすると、JGβ緩和が出てくる気がするが、そのあたりの影響はないんだろうか。
・パッチコロイドで実現できそうなのはすごい。
・サプリには理論的背景もあるから、時間を取って読んでみたい。